ターニャさんへ。
そう思えるあなたは優しいですね。
この地球上で、別種のことを考えようとすることが出来るのは、人間だけだと狼は思います。
狼だって自分勝手です。
確かに人間は土地を開発し、狼を害獣と呼び、ついには日本から消し去りました。
けれど狼は山の獲物が足りなくなったら、勝手に人間の村まで下りました。人間が愛情を込めて育てていた、羊も食べました。
他の生物たちも、自分たちに利があるかどうかで進化が決まり、生き残るための努力をします。
ですが人間の進化は早すぎました。狼たちはその「化学」という新しい武器の発展に、追いつけなかったんです。
そして人間もまた愚かでした。その武器の恐ろしさの面に気づくのが、数年、数十年遅かった。
けれど、それだけです。
狼も、人間も、他のみんなも、いつか跡形もなく消え去ります。
それはいずれ来る当たり前の現象で、たまたま今の自分たちがその一端を垣間見ているところなのでしょう。
ゆっくり歩みましょう。その愚かさも、尊さも全て抱えて。