孔子の教えの一説に「犭貪」(とん)という想像上の怪物が出てくる。
獣偏に貪る
と書いて
「犭貪」トンと読む
その名のとおり、貪欲な獣である。
とにかく何でも喰らう。
その怪物の特徴は、まず、巨大であること、それに、とても欲深いことだ。
なんでも喰ってしまうのだ。
土塊(つちくれ)も鉱物も山も海も、
草木や獣だけではなく、人間やその人間が作ったものまで喰らう。歴史や詩歌などの書や舞曲といった文化、金銀財宝などの富まで、ありとあらゆるものを喰らうのだ。
しかも限りがない。
自足するということを知らぬのだ。
(それは太陽をも飲み込み、最後には自分自身の体をも食べ尽くして)
「犭貪」は闇だけを残す。
そして、無……である。
欲望のなれの果てだ。
最後には自分自身の体をも食べ尽くしてしまうことよって我が身をも滅ぼして無へと帰するという
人には私利私欲が少なからず大小問わず存在する。
欲や欲求や振りかざす権利
利己主義
時にそれらの度が過ぎれば
やがて破綻して
総てを失い
身を滅ぼす。
「犭貪」
総てを喰らうモノ・・・
無の世界とはどんな処なのか?