学生のころは学生のころで、それなりに悩みを抱えていた。テストの点数、友人関係、進路、就活、好きな人。振り返ればどれも当時は重大事で、夜眠れなくなるほど頭を抱えたものだ。けれど時間がたつと、不思議なことに「なぜあんなことであんなに悩んでいたのだろう」と首をひねる。今となっては笑い話にすらできる。
逆に、あの頃は自分とは無縁だと感じていた問題が、今の自分には現実のものとして降り注いでくる。仕事、人間関係、健康、お金、将来への不安。学生時代には「大人が勝手に悩んでいること」としか見えなかった事柄が、今の私には日常の一部になっている。
思い返せば、学生時代の最大の悩みは「社会人になったらきっと疲弊して、すぐに自殺するんだ」と暗い予感にため息をついていたことだった。そんな未来を信じ込み、勝手に絶望していた自分がいた。ところが実際に社会に出てみれば、確かにしんどいことは多い。けれど、不思議と人は慣れるものだ。どうにかなったり、ならなかったりを繰り返しながら、結局のところ私はこうして社会人十年目を迎えている。
気がつけば「悩み」というものは、更新ボタンを押すように上書きされていく。解決したと思ったら新しい悩みが生まれ、古い悩みはどこかへ退場していく。まるでパソコンのデスクトップに同じ名前のファイルを保存していくように、悩みは上書きされ続けるのだ。
社会人十年生になった今、私は知っている。悩みは消え去るのではなく、形を変えて残っていく。そしてこれからも、新しい悩みが「ファイル名そのままに」保存されていくのだろう。
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