はじめに。
小瓶の手紙を書くにあたって、個人の特定につながりうる情報は極力削りましたが、万一「当事者(たち)」が読んだ場合、自分事だと感づいてしまうかもしれません。私はそれを望みません。
だから、大きなわがままなのは承知の上で、どうかお願いです。
『2017年3月〜2021年3月までの間に日本国内の高校を卒業された方、およびその親御さんは、この先を読まないで下さい。』
この時間に幅を持たせていることも、特定防止の一環です。
自分勝手なお願いですが、どうかご理解ご協力をお願いします。
私は心身ともに女性で、学生時代に私が片思いをしていたのは同性の人でした。
はっきりとした理由は分かりませんが、私はその人のことが好きでした。
告白しようとは思いませんでしたが、もしも相手が私と同じ気持ちになっていたらな……そんなことも考えました。誕生日プレゼントを渡してそのまま逃げた日の事を考えると、無意識的なアプローチもしていた気がします。
その人とは友達としてよく一緒に過ごしました。第三者を交えると、その人への恋愛感情は薄まりましたが、二人きりになるとまた恋しい気持ちも湧き上がって、その時間がとてもとても尊いものだと実感しました。
自室の布団の中でその人の事を考えてドキドキして、布団をぎゅっとした夜も何度もあります。
そんな良い思い出もたくさんですが、やっぱり一人でたくさんの重たい感情を抱き続けるのは辛かったです。本人を始め、誰にも気づかれたくなかった。
ちなみにまた後でも述べますが、大人にその事を一度だけ話しました。否定されました。辛かったですが、今となっては色々無理もなかった状況だとも思うので責めません。
卒業後その人とは別の環境になりました。
その後、機会があってその人のsnsの鍵垢と相互になりました。
そしてそこでその人の心が男性であること、そしてその人には心身ともに女性の恋人がいることを知りました。
無知により傷つけてしまったかもしれない。
きっとそうだと思う。その人は不登校気味で、何も知らない頃の私でも、その人が何か重たい物を抱えていることには薄々気がついていた。
ごめんね、ごめんね。たくさん傷つけたよね。
心配性だった私が。無意識に振り向いて欲しかった私が。
過去の振る舞いを思い返すたびに、その人に負担をかける言動をした心当たりが多すぎるのです。
どうかあの人が私の感情に気づいていませんように。これからも気づきませんように。
恋人さんへの嫉妬は、無いと言えば嘘になるかもしれないけれど、私があの人を傷つけてしまったであろう分、恋人さんにはあの人を幸せにしてほしいし、あの人は恋人さんを幸せにしてほしい。
きっと私にはその役目は果たせなかったから、どうかあなたが。
過去を振り返ると自分の不甲斐なさに呆れてしまいます。
あの人に友達と呼んでもらう資格は私にはないはずです。
それでもあの人は私を友達だと呼んでくれます。つい先日も、一緒にゲームのオンラインプレイをしました。楽しかったです。
もう少し続けさせて下さい。
私は、女性/男性だから、という理由でその人を好きになった訳ではなく、その人がその人だから、好きになりました。
一方、それとは全く別の事象として、私はその人の声が好きでした。綺麗な声、優しい声、深みのある声、女性の声。
音楽の時間の歌声も、国語の時間の音読も、とてもとても好きでした。
その人は、自分の声は好きではないそうです。
私はその人をもう苦しめたくないです。
夢を叶えて幸せになってほしいです。
隣にその人を大切にしてくれる恋人さんがいて、周りの友人にも恵まれて、心も身体も健康で…
こう書くと定型文的ですね。幸せのカタチは人それぞれ。あの人が自分なりの幸せを得られたならそれで私は嬉しいです。
だからそのためにも私の心の内は絶対に見せてはいけない。けれどさすがに一人で抱えているのは疲れました。
それと、私は自分の気持ちを否定したくありません。
大人の人に、ここまで書いた私の恋心を否定された日(当時は私もあの人の性自認を知りませんでしたが)から、ずっとそう思っています。
それもあって私は今これを書いていて、これから広い海に流します。
はじめに書いた長い注意書きの理由はそういうことです。吐き出したいけれど、本人を傷つけてはいけない。傷つけたくない。だから。
…自分勝手なことに変わりはないかもしれませんが。
これを読んだあなたが私を肯定しても否定してもそれ以外でも、構いません。
もしもお返事を頂けたら、嬉しいなと思います。
私は、過去の気持ちをどこかに抱えながらこれからも生きていきます。
あの人の進む未来に、祝福がありますように。