誰かに優しく
褒めてもらうと
当たり前の部分に
ひかりが見える
あれ、これもいいんだ
これもありなんだ
って
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
投稿したい気持ちと、ごはんが食べたい気持ち、
頭で考えたら、先にごはんかな、
投稿すると、
すごくドキドキして緊張するの
あのときとおなじ
進研ゼミの課題が
とどくとき
付録の雑誌がね
すきだったの
ドキドキは、あんまり、すきじゃないの
でも、
きらいじゃないの
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
「やあレニ。元気?」
ポニーテールの髪を揺らして、マオが私の隣に座る。
「……マオ、またパンだけ?」
「これが一番安いから」
肩をすくめつつ、パンを大口で頬張る。
「それより、テストは大丈夫なの?留年.......
というか退学がかかってるんでしょう」
「レニは14歳なのにしっかりしてるなぁ。さすがに4回も留年したら退学だもんね」
もぐもぐと口を動かしながら話すマオは、のんきすぎると思う。
「ま、私の努力でどーにかなることじゃないし、成り行きと運に任せるほかないさ」
マオが淡々と述べる。
その口調には、もはや何の感慨もない。
「ほんと、この国の制度にもエコひいきする教師にも、ヘドが出る」
私が吐き捨てると、マオが苦笑いを浮かべた。
「そんなこと言っちゃっていいわけ?国のトップの孫娘で、学校のトップの娘なのに?」
「血がつながってないことに感謝するわ。ごちそうさま。私は勉強してくるから」
ガタリと椅子を引いて、お皿とコップを返
却口へ戻す。
教室に向かって歩き始めた私の手が誰かに
つかまれた。
「頑張れよ、レニ」
男の人の声。だけどこの声は──
「ええ。マオ、あなたの方こそ」
マオのものだ。先ほどと同じくポニーテールを揺らしているけど、顔つきや体つきが違う。
マオは境界をつかさどる魔法使い。
性別の境界や生物の分類の境界……
そういったものを越えることができる。
今のように、男の子になることも。
教室に向かう途中、ひそひそと話される声が耳に届く。
「あれがアインホルン家の娘?」
「飛び級で入って、まだ14らしいわ」
「飛び級って言っても、座学が優れてただけでしょう?魔力は少ないらしいもの」
「あぁ、双子の妹の予備だって話……」
「アインホルンってだけで、魔力少ないのに贔屓されてるのよ」
ああ、本当。
この国って腐ってる。
ヘドが出る。
コツコツコツ──
ヒールを鳴らす音が耳に入って、顔を上げ
た。
「今日はナタリー先生がお休みのため、私が試験監督です」
その人物の顔が目に入り、思わず顔をしかめる。
「レニ・アインホルン。いつまで教科書を出しているの?」
「申し訳ありません、学園長。まだ試験時間ではないと思うのですが」
「まぁ、風に乗せて伝えたはずですよ?ねえ、みなさん」
学園長の問いかけに、周りのみんながうな
ずく。
風に乗せて──というのは、風魔法を使ってということ。
1人だけに伝えないということも可能であ
る。
……なるほど、嫌がらせですか。
ガタッと後ろの扉が開く音がして、そちらに視線が集まる。
「マオ・フィルス。遅刻です。成績から5点引きましょう」
その声に虫唾が走った。
きっとマオにも伝えていなかったんだろ
う。
学園長が私以上に嫌っているのがマオだか
ら。
「アインホルン学園長の寛大なお心に感謝します」
そう話すマオの声は、女の人のものだ。
アインホルン学園長──これが私の、血のつながりのない母親。
「まったく。留年していて一番年齢が高いのですから、しっかりしてもらわないと」
学園長がため息をつきつつテストを配る。
風魔法で操られたプリントが、私の前にも
ふわりと舞い降りた。
「では、試験を開始します」
裏返されたプリントをめくる。
……所々文字が見えない。
一定の魔力がないと読めないようにしてあるみたいだ。
爪先が冷えていく。
……これじや、マオの留年ーー及び退学は確定だ。
学園長が試験監督として来た時点で、嫌がらせは予想していたけど。
こんなのって……。
「死ねばいいと思う」
木が生い茂る校舎の外れ。静かにつぶやきをもらした。
「ちょ、ちょっとレニ!誰かに聞かれたらどうするの……!」
マオが焦ったように周りを見渡す。
「だってそうでしょう。もう、本当になんなの?生徒のことを、人間のことを何だと思ってるの?」
そう話す唇が震えて、泣きたくないのに涙が出てくる。
「あぁもう。レニは優しいな。こんな魔力少なくて、平民上がりのにも心をかけてくれて
さ」
悲しそうに笑いながら、私の涙をぬぐってくれる。
「私のことはいいんだよ。少しは魔力あるし、男にもなれるし、学園出ても多分なんとか生きてけるよ」
生きていけるよって笑うけど。
マオには病気の妹がいる。
生きていくことはできても、妹の薬は買えないだろう。
「夢をみた私がバカだったんだ。平民は平民らしく、身の丈にあった暮らしをするよ」
そう話すマオの顔から、表情を読み取ることはできなかった。
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
小説は、ひとりぼっちの寂しさに、優しく寄り添ってくれる
ずいぶん前に書いた、
続きが書けない小説
でも、ここで終わるのも、ありかもしれない
世界のさみしさを映してる
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