「で、天羽。いつから気づいてたんだ。」
コーヒーを啜りながら尋ねる設楽先生の顔は、怒っているようにも、スッキリしたようにも見えた。
ここは、給湯室裏の教育相談室。
なんだか最近、これまで入ったことのない教室に訪れがちな気がする。
「先生、独身いじられてブチギレたことあったじゃないですか。」
「何か都市伝説みたいな広まり方してるらしいな。」
そんな他人事みたいに…。
「設楽先生、たまに孤独な顔するんですよ。一人でお留守番って言われた、ちっちゃい子みたいな。」
「ふは、天羽にそんな風に思われてたなんてな。ったく、かなわねぇわ。」
コーヒカップを置き、俺の目を真っ直ぐに見据える。
「明來にも話したことだ。お前も聞くか?」
家に帰ると、まっすぐ自分の部屋に入った。
「なるほど、だから何か似てたのか。」
先生の家庭は、奥さんが旦那さんにDVをしていたらしい。
当時としては珍しいこの話はまともに取り合ってもらえず、段々エスカレートしていったらしい。
それを見ていた先生は、恋愛や結婚といったものが怖くなってしまったらしい。
『あん時は、同僚の結婚式に呼ばれた後だったりして気が立ってたんだよ。本当、教師に向いてねえよなぁ。』
二人から漏れ出てくる孤独の雰囲気は、やっぱり共通するものがあった。
『その話した後、明來どうでした?』
『こんなに自分と同じ境遇の人いるのかってボロ泣き。あと、瑠唯って人を見る目あったんだーとか言ってたよ。』
『失礼すぎる…。まあ、明來が心を開いたなら良かったです。』
『おうよ。―さ、次はお前の番じゃねえの。』
俺は先生から、世界一の宿題をもらった。
そういえば、先生がキレたあのクラスの話。
「アロマンティック」という、人を好きにならない生徒が居たらしい。
俺は、先生は教師の鏡だと思うけどな。ちょっと過激すぎただけで。
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