外に出たい。
外に出たい。ただそれだけ。
高校三年生まで親の言いなりのまま生きてきた。
どんなに変えようとしても、わずかにも私の意思は尊重されなかった。
諦めた矢先、学費が払えずに退学した。
やりたいことを考えたこともなかったから、
ない頭ふりしぼって堅実な大学を選んだ。
人を見下しながらやる勉強はとてもはかどった。
成績はうなぎのぼりで、合格した。
大学生になったら。
今まで無駄にした十代を取り返すつもりだった。
スマホを封印して
浪人したときのように図書館に通い詰めて
自分を追い詰め続けて
達成感を得たかった。
それがどうだ。このザマ。
眼にも見えないゴミ以下のウイルスに翻弄されて、
はじめはやる気に満ち溢れていたのが、
家でどんどんクッションに頭を埋める時間が増えた。
外には出させてもらえない。
いつも玄関先は怒鳴り声が飛ぶ。
こんなことを書いたところで、
誰も私の人生を生きていないから、
私の詳細はわからない。
だけどなんなんだ、あの忌々しい病気は。
殺してやりたい。
殺してやりたい。
殺してやりたい。
お前が奪った命を返せ。
お前が奪った希望を返せ。
お前が奪った時間を返せ。
それでも私が世の中の役に立つには、
もう勉強することしか残されていない。
今日も私は、
背中を丸めて勉強する。
数学物理英語にプログラミング
成果を出している社会人や優秀な同世代、年下の子から見れば
馬鹿馬鹿しく
私如きの努力なんて
あなたたちに比べたら
なんの成果にもならないものだろうけど、
いつかみんなの役に立てると信じてる。
いつかまた外に出れたら
図書館に一日中通い詰めて
土日だけ家事を勉強する
あの浪人時代のような思い詰めた日々を
送りたい。