地球のもつ衛星に惹かれて、月夜烏が鳴く。杲杲たる星に導かれ、月読の神が唄う。闇に木霊する子守唄を聴いて、人は眠る、心の深層で、夢を思う。
*宵闇夜想曲*
闇に小さなランプをいくつか並べて、蝋燭には火を灯す。椅子やテーブルには細心に気を配り、アンティーク調。そうかと思えば、絵画をはじめとする装飾はまるで夢を与えるような光に満ちたものばかり。
演出される美的空間はいままで観てきた中で一番に魅惑的で酔狂があり、――なによりニクい。
「マスター、お願い」
「本日は諧謔曲でしょうか」
「いいえ、どちらかといえばミサね。」
若い女はその若さに似合わぬ哀愁を漂わせていた。このバーの、唯一無二ともいえる常連である。
「ミサ、鎮魂歌ですか。それはまた珍しい趣向で」
「そうね、私にしたら」
「貴女にしたら」
マスターは復唱して、味わうように今の彼女についての様子を舐めとる。いつだってここに来るときには、明るく、弾けたものは見せない。ここは、彼女にとって、無論、他の人にとってもそういう場所であるし、そうでありたいと願ったがゆえ。
暗さを、闇を吐き出す場所。
店の名前はとある有名な偉人の言葉をもじってなづけてある。
それを彼女は一目にして、意味を感じ取ったらしい。
初めてきたときに、粋がよいと言われたのをマスターはよく覚えている。
「どうぞこれを。本日は私(わたくし)も趣向を変えて、」
「……これは?」
「エニグマ…変奏曲ムニロッド、と名付けております。作曲家エルガーが友人たちのイニシャル、名前を章題につけた曲だそうで、その友人たちの様子を表したものでして、個人的に不思議な情感が浮かぶもので。ちょうど、そのカクテルのように」
「…戴くわね、」
ワイングラスを何度か回して色を観る彼女の目には、カクテルの青色よりも悲壮感の青色が溜まっていた。
ワイングラスを磨いて、彼女の口が開くのをまつ。幸い、他の客もいない。
静かな時が、流れる。
「……今日、葬式だったわ」
ぽつり、零れる音には韻がある。艶やかで、奥ゆかしい、優雅。しかし、やはり、それはいつもよりは美的なものを失っていた。
「、親友の、お葬式だったの。彼女、まだ23なのよ」
小さな水たまりがワイングラスを支える、震えた手にできる。
「しょうもない話だった。」
はき捨てた。いとも簡単に。でも見捨てはしない。大事だってことはよくわかっている。
「彼女、男に裏切られたの。愛していた、男に。それも、その傍には他の女もいた。彼女を追い詰めたの。彼女は追い詰められたわ。そして、」
カタリ、カウンターとグラスが擦れる音がして、液体は彼女の喉を通って、落ちてゆく。
「死んだ」
涙の代わりに。
「なにも、あの子には恋愛だけじゃない、仕事だってあった、優秀だった。でも、純粋で、無垢なの、素直でまっさら、感情的すぎるのよ、あの子は」
おさまったはずの怒り、悲しみ、愛しさ、憎さ、もろとも混沌として許容範囲をこえてこようとする。ぐっと、堪えて。肩が震える。
「知ってたの、私。」
同情、慈悲、それとも思慮?
「あの子の男が、他の女といるのを。偶然だった。けれど、表情や仕草で、あの子との扱いが違うと気付いた。気付いて、……なにも、しなかった。」
――言えば、彼女はいまここにいたかしら。
―――いいえ。それは見当違い……きっと、死期を早めただけ。
「…なにも、わからないわ。あの時、こうしていれば、ああしていれば、あの子は、って、ずっと思ったけれども」
運命、なのかしらねって薄く笑う。
マスターはただ肯定も否定もしない。
「でもね、ひとつだけ。これだけは言えるわ」
グラスのカクテルはもう、一口分。もうそろそろ、潮時だろうか。最後の一口をいただいて、空のグラスを感情的に置く。
「私は、人間が、女が……感情が、嫌いよ」
衝動に任せた行動、焦燥と不安、絶望、悲哀、負の感情とそれに伴う実質的傷みの増倍。感情の、豊かな子だった。理性より感情、直感の勝る頭の構造、発達。そして、だからこそ。
「しかし、」
マスターは溜めを作った。
「それでは、このように彼女を思う貴女はいなかった」
その通りだ。
感情がなければ、私は。
「………皮肉ね、私はこんなに彼女を思うことはなかった。」
――私があの子をこんなに思っていることに、気付くことはなかった。
「……ここまで乱れる貴女は初めてですね」
「…そうね、初めて。」
静かに夜が更ける。
大きな恒星に魅せられた鳥はさえずり、天照神は精一杯の希望を降り注ぐ。人々は、その光に恋い焦がれ、歩き始める。
「朝まで付き合わせて申し訳なかったわ……」
「いえ、ほんの気紛れです、私(わたくし)の」
「………ありがとう」
光が、射す
「ミサは、………もうヤメね」
「では、次は?」
「即興曲でもいいかしら」
「仰せのままに、ではまた」
「ええ、また。」
人は醒ます、夢からすぐそこへと。
**
酒も飲んだことないのに
突発的に書いてしまいました
人称もバラバラですし、
曲の知識も曖昧ですが
よければ感想を……。
名前のない小瓶
12162通目の宛名のないメール
小瓶を525人が拾った
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お返事4通
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お返事が届いています
レクイエム=鎮魂歌
・バーの店名が結局何なのか、俺には分からない。
(*宵闇夜想曲*←これ?)
・日本神話やある偉人の存在を、もっと話の軸とからめてほしかった。
小瓶のストーリーが↑で完結するとして、こんな感じはどう?ってんで、気になった部分↓を…変えてます。
極力小瓶の言葉と同じものを用いて。
他人の好みってことで。
[入りの部分]
夜は更け…ツクヨミが唄う。
静かな夜に木霊する子守唄。
闇の深淵に、人は眠る。
心の深層に、夢を思う。
(深淵は、奥深く底知れないといった意味で、
深層は、奥深くにあるものといった感じで。
韻を踏んでるつもり)
[運命]
運命、なのかしらねって薄く笑う。
マスターはただ肯定も否定もしない。
↓
「運命、かしらね…。」薄く笑う。
マスターは否定も肯定もしない。
(誰に言うでもなく、独り言のような。
マスターは傍からそれを見てるだけ)
[感情]
衝動に任せた行動、焦燥と不安、絶望、悲哀、負の感情とそれに伴う実質的傷みの増倍。感情の、豊かな子だった。理性より感情、直感の勝る頭の構造、発達。そして、だからこそ。
~~~
↓
「私は人間が、女が…感情が、嫌いよ」
感情の豊かな子だった。理性より感情…
何より自身の直感を、信じていた。
…だからこそ。焦燥、不安、絶望…負の感情…。
悲哀に満ちた、衝動に任せた行動。
(もともと感情的、かつ衝動的な人ゆえに悲しい結末を迎えてしまった。ここは
分かりやすく、順を追って表現。
ここで言いたいのはそこなので、他の言葉は省く。想像にまかせる)
「しかし…」
マスターは言葉を濁す。
しかし、感情がなければ私は…。
「しかし、それでは貴女は…」
「ここまで彼女を思うことはなかった…?」
ほんのわずかな、溜めの後の言葉。
「皮肉なものね。」
「…そんな貴女は初めてですね。」
「そうね…。」
(タメをつくって、その間に主人公(?)の思いを明かそうとする。そこで先にマスターが語ることで、皮肉という言葉が深まる(?)。
先に言われちゃったわね、その通りね、笑えない話ね…のような。)
[締めのところ]
「朝まで付き合わせて申し訳なかったわ……」
~~~光が射す。~~~人は醒ます、
夢からすぐそこへと。
↓
曲の終わり。
「付き合わせてしまったわね。」
「いえ…気まぐれです、わたくしの。」
「次は?」
「即興曲をお願いするわ。」
「仰せのままに…。」
「…ありがとう。」
宵闇に、光が射す。アマテラスは希望を降り注ぐ。
鳥がさえずり、人は目覚める。
希望の光に恋焦がれ、歩き始める。
(曲の終わり…で、時間の経過を匂わせる。
曲が流れている間、ずっと語っていた感じを出す。
話の前半に「マスターお願い」という台詞があるので、聞きたい曲を言う時の台詞をやや強気な感じにする。最初にツクヨミ、終わりにアマテラス、とすることで、心の闇の晴れを表現。)
(で、個人的な想いとして、読み手にアマテラスかツクヨミが店名なのかな~、と想像させたいので、名の頭だけをカタカナ
表記で。カクテルチックにしたつもり)
ぜ~~んぶ主観、個人の好みで、正直、音楽のことはスルーして書いてる。
軽い気持ちで書いたものにここまでするか?
って感じですが、お気になさらず。
では。
by28歳くらいの人
マスターと女性がカウンター越しにいるのが目に浮かびました
良いですね
綺麗なお話(^_^)v
続編希望です!
鎮魂歌はミサじゃなくてレクイエムだと思うけど
以下はまだお返事がない小瓶です。お返事をしてあげると小瓶主さんはとてもうれしいと思います。
理由がある事は聞く耳持たないのに、どうでも良い理由がない事にはやたら食いつきが良いのはなんだろ
大切に思える君。私には大切に思う人がいます。多少は恋愛感情はあると思います。ただ、その人には他に好きな人がいます。私よりも全然魅力的な人です。
あの人と連絡が取れなくなって一ヶ月。
初めて「死にたい」って思ってから6年。毎日毎日それしか考えてない。私に生きてる価値なんてないよね。ごめんね。
男らしさを求めてはいないが、虚しくなる
生きていかなければならない。たとえ生きていることに納得できなくても。生きている意味が分からなくても。自分のことがこの世で一番嫌いでも
この世に生まれたことを無かったことにしたい。私は誰からも嫌われてしまう。会社でも友人からも家族や親戚からも
失恋すらできない。あの子のことが好きだった。でも相手は自分と同じ女の子
本格的に自傷を始めた。蹴られて殴られて、それに反抗したら怒鳴られて。ヒステリーをこれ以上起こしたくなかったからハサミで左腕を何度も切った。
愛を伝える言葉というものについて考えていたという話
あなたがいない日々を過ごしてみて。やっぱりあなたが必要だってわかった。やっぱりあなたが好きなんだって
現状報告…。死ぬ死ぬ詐欺をしているようで自分に腹下が立つものの、今のところ生きてます。
気軽に話しにいけない好きな人とクラスが離れた。これから話すどころか見つめることも出来なくなると思うと悲しいです
38年生きたのは。
長女になんて産まれなくなかったです。