僕も最初は勉強嫌いでした.最も苦手だったのは数学と理科.勉強しても全然点数あがんないし,そもそも何のために数学や理科を勉強しているんだろうって思っていました.
ところで,僕は幼い頃から工作が好きでした.父も母も電気を専門としていませんが,父が休みの日によく家電製品や僕が壊したおもちゃ(プラレール)をはんだごてを握って修理してくれていました.その背中を見て育った僕は,不要になった段ボールで工作したり,プラレールに太陽電池や豆電球を搭載してライトアップ仕様に改造したりと,自身の興味のベクトルが向くままに工作に熱中していきました.特に後者については面白く,これがきっかけで電気が好きになりました.
残念ながら,これが受験のための成績アップに直接つながることはあまりなかったように思います(電気といっても理科の授業でオームの法則に少し触れた記憶しかありません).ただ,幸いなことに中学校の技術家庭科の授業でラジオ基板の製作に没頭し,電気のことをもっと知りたいといったモチベーションが向上しました.僕はこの経験をきっかけとして後に工学部電気電子工学科への進学を志すようになります.
しかしながら,工学部は理系の学部です.進学するためには僕が苦手とする数学と理科を身に着けることが必要条件となります.高校に入学してからも相変わらず数学と理科が苦手だった僕はどうすればこれらの科目を得意にできるかを考えました.
まず一つはライバルを作ることでした.高校の友達の中に模試で常に数学の偏差値を70以上マークする強者がいました.僕はまず彼と競うことからはじめ,彼に追いつこうと必死に問題を解きまくりました.良薬口に苦しとはよくいいますが,これは自身の修行の一環だと考え取り組みました.結果,僕は数学の偏差値を20も上げることができました.また,手を動かす中で解けなかった問題を解ける喜びを味わい,数学が好きになりました.ただし,好きと得意は違います.僕は好きだけど苦手な部類だったといえます.でも好きだから数学の勉強を続けることができました.
次に,試験の点数にあまり左右されないことでした.先述のとおり,僕にとって数学は好き科目ではある一方で,そのテストの点数はあまりよくなかったように思います(先述の模試の結果はたまたまで,その後の定期テストや模試の結果は散々なものでした).ここで一つお伺いしたいことがあります.あなたは,なぜ勉強するのか考えたことがありますか.成績を上げて親を喜ばせるため?それとも自身の可能性を広げるため?いま一度考えてみてほしいと思います(まわりがこうだからというのはあなたの答えではありません,あなたの答えはあなた自身の中にあるはずです).
それと大事なことは,学校で学ぶ科目があなたにとって学びとなる科目のすべてではないということです.日常生活でも学べることはたくさんあります.僕は日常生活の「なぜ?」に疑問を持ちながら,それをうまく高校の理科(物理)の勉強に組み込むようにしました.「ペンは手から離すと落ちていくのに,なぜ月は落ちてこないんだろう?」と万有引力の法則を疑いながら学んだ記憶があります(突き詰めた結果,先生は大学物理の内容を教えてくださいました).しかしながら,こういう学びって点数化されませんよね.もちろん成績が上がることもありませんでしたが,僕は自身の好奇心を満たせたことが一番の喜びでした.
勉強というものをひとくくりにしていませんか?国語,数学,英語,理科,社会.これらがあなたの学びのすべてではありません.僕にとっての電気・鉄道・科学教育・異文化,あなたにとっての教育・メディア・歌.学べるソースはいくらでもあります.まずは一度,学校の勉強以外であなた自身の興味につながる学びを,それこそ本やインターネット等を通して見つけて試しに学んでみるのがいいのかなと思います.それこそ,たとえば研究者の方々はすべての科目をオールマイティにできなくとも,ある一分野で他人に負けないぐらいの深く突き詰める能力を持たれているからこそ,研究というお仕事をされているわけですから.もし学校の勉強を頑張りたい,好きになりたいと思うのなら,あなた自身の興味と学校で学ぶ科目との共通点を(少しでいいと思うので)見つける努力をされると少しは好きになれるのではないかと思います(実際に僕も高校物理で電気回路の章に入ってからとても楽しく学んだ記憶があります).あと,本当に自身のやりたいこと,学びたいこと,好きなことが明確化しているなら,あなた自身の興味や将来の夢につながるような学びができる大学や専門学校について調べてみるのもよいかもしれません.オープンキャンパスなどもあることですしね.
それから,僕自身もそうでしたが,学びのきっかけや興味の対象を得られるか否かはなんだかんだ人との出会いに依存する部分,運の要素が大きいのかなと思います.僕が父の背中を見て,技術の授業を通して工学部への進学を志し,高校の友達との出会いを経て数学が好きになったように,まずは若いうちにできるだけいろんな価値観やバックグラウンドを持った人々と交流していくのが大切だと思います.いままでの話からすると僕の人生は順風満帆のように聞こえるかもしれませんが,実際は成績が思うように上がらなかったり,第一志望の学校に不合格となったり,いじめで苦しんだりといろいろありました.でも,これらの挫折や失敗があったからこそ出会えた方々もいますし,その方々との出会いを通して新たな志を立てることができた経験も多いです.むしろ,挫折や失敗から得られたもののほうがこれまで生きてきた中で多かったのではないかといまの僕は振り返ります.いじめの経験を例にとると,僕はどうも空気を読むのが苦手なようで,それが原因で同級生や先輩,先生のいじめの標的にされました.その苦難を乗り越え,大学生になった僕はこのいじめは日本の陰湿な空気が作り出していたのではないかと考え,一度違う世界を見てみようと思い立ち,カナダに留学しました.その結果,日本ではいじめの標的となっていた僕の個性を尊重してくれる先生や友達に出会うことができました.特に往路の機内で隣に座っていた女性の方が「そんなこと(いじめ等)に加担する人と関わる必要なんてない」と声をかけてくれたこと,帰国の前日に友達が「たけはたけらしく生きていい」と声をかけてくれたことがとても印象に残っています.これが一つ,いじめの経験から得られた宝物です(結果論ですが).
あなたのこと(好きなものからセンスがないところまで),あなたの個性そのものを愛し,受け入れ,尊重してくれる人が必ずしも日本にいるとは限りません.ましてや高校なんてただでさえ人口が少ない社会である日本のさらに細分化されたごくごく小さなコミュニティにすぎない.そこで可能性を狭めてしまうことのほうがもったいない.これからあなたはいろんな人に出会っていきます.もちろん反面教師にしたくなるぐらい嫌な人との出会いもあるとは思いますが,あなた自身ができる最大限のことを頑張りつつ,いろんな人々との出会いや交流を大切にしていってください.そこでなにかきっかけが得られるかもしれません.ちなみに僕はこれまで「海外進出なんてもってのほか!」と思ってきましたが,カナダから帰国してからは「海外進出してやる!」と思っています.また,いま好きで学んでいる学問は大学に入学してから出会い,興味を持った学問です.長い人生,いつどこでどうなるかなんて誰にもわからない.無理せず,できることからやっていきましょう.あなたはあなたらしく.あなたはあなたです.あなたという人はこの世でたった一人しかいません.まわりは関係ありません.あなたの思い描く,あなた自身ができるだけ後悔しないような人生を送られるよう祈っていますし,応援しています.
長文失礼いたしました.答えになっていない可能性が高い,僕の稚拙な文章を最後まで読んでくださいまして本当にありがとうございました.
・・・小瓶の中の手紙を読む