たとえば私は貴方が好きで、
貴方も私の事を好きでいてくれて、
お互いに
あぁ、この人は私の事が好きなんだなぁ
って分かるぐらいには溺愛してて
でも好きとは告げないの。一度もね。
抱擁はする。キスもする。
でもワンナイトラブにならないように
ベッドにだけは入らないの。
全て嘘だった、と言われたらそう思ってしまいそうなほど何も無くて
愛のコレクションみたいに、
貴方と私の存在だけが、
この関係を裏付ける証なの
この関係に貴方は満足していて、
そんな貴方に私は必ず寄り添うの。
いつまでもいつまでも変わらない貴方との関係。
不思議な感じがするの。
許される関係じゃないのに、証拠なんてなくて。
貴方との関係を誰にも咎められないのは不健全だと思う。
世界から自分たち二人だけが切り離されているみたいに感じて、
それが寂しくもあり、嬉しくもある。
一日の終わりには必ず抱擁されて、
二人だけの秘密。 って
その響きは、二人にとってひどく甘美で魅力的。
一度だけ、私は貴方にこの関係の名前を聞くの。
そうしたら、貴方は
この関係に名前はないよって言うの。
その返事に、私は酷く安心して、嬉しそうに笑う。
子供が欲しいとか、愛が欲しいとか、
そんな幻想的なことは考える隙もなくなる。
頭の中は相手の事でいっぱいになるの。
勿論、貴方もね。
例えるなら…
じわり。じわり。
真綿に血液が染み込むように。
何もかも当たり前。
この関係も、このお話も、この想いも全部全部ふつう。
いつの間にか考える事さえしなくなる。
だって当たり前だから。
どう思った?気持ち悪いって思った?
当たり前なわけがない、って。
突き放したくなった?
絶対にそうはならないよ、
だってそう思うように貴方が貴方自身にそうしたんだもの。
私にとって全てが当たり前になるように
したのは貴方よ。
そういやそうだ、って思い出した貴方は
もう離さないから、と言って私をまた抱擁したわ
ねえ、どうして死んでしまったの