急に。寧ろ今まで思えなかった。時間が異様に
長く感じて、生きることが億劫で。
どちらに進んでもどうせ死ぬのなら、どこに
進む必要もないと、生きる意欲を失っていた。
死んだらどうなるか分からなくて怖いという
気持ちはない。死んだら一つになるから。
宇宙に溶け込める。その方が嬉しいとさえ
思った。それなのに急に後悔のない人生を
なんて思ったのはなぜだろう。最も身近な死は
母の死である。だから何となく死はこんなもの
という感じもある。にも関わらず何も分かっては
いなかった。遠くに感じ過ぎている。大好きな
有名人くらいの現実味のない距離感。現実味
とはつまり明日死ぬということである。いつ
死の宣告があるか分からない。今年の誕生日で
ラスト10年のカウントダウンが始まる。ような
気が勝手にしている。親の寿命は一つの人生の
ターニングポイントのような気がする。
人生でやっておきたいこと。リスト。何だか
怖いような。でも今という感じ。ただし生きる
上で必ず手に入れなければならないものは存在
しない。死を前に全て置いて行かなくてはなら
ないから。この世の幸せはいつか消える。だから
こそ貴重。泡のように必ず消えてしまう儚い幸せは
生きている間にしか手に入らない。しかもそれが
儚いと分かりながら手に入れようとするのは人間
くらいだろう。聞いてみよう。自分の心に
まっすぐ。