「ねえ、聞いてもいいかな。」
センセイは僕にむずかしい質問ばかりした。こたえられないような質問ほどかんがえさせられた。
「そんなのは君じゃないよ。」
センセイは、ふしぎなことに僕より僕についてよく知っているようだった。そのたびに僕はふくざつな気持ちになった。
「何を考えているの?」
センセイは、僕がぼんやりしていると、よくそんな質問をした。わすれたと答えたら、センセイはこまったような顔をする。
「君は空っぽだね。」
センセイは僕にそう言った。おこっているような、かなしんでいるような顔だった。
「そんなに長い間、ずっと独りで耐えていたの?」
センセイは泣いていた。僕をものすごい力で抱き締めて泣いた。僕はびっくりして、センセイが心配になった。センセイが泣いているあいだ、ずっとセンセイの頭をなでた。
「君は、強いね。僕は弱虫だ。」
センセイははずかしそうに言った。
僕はつよくなんてない。逃げだすことすらできなかっただけ。たえる以外の方法を知らなかっただけ。
僕はじぶんがばかで無力だったせいで、たくさんのものをなくしてしまった。もうにどと手にはいらないものだ。
でも、僕にはセンセイがいる。センセイは僕のすべてを理解し、束縛する。そして正解をおしえてくれる。
センセイがいなくなれば僕はもういきていけないだろう。