靴を履いて、振り返る。
なんとなく不安そうなCちゃんの姿があった。
「帰り、気をつけてね」
「了解」
「おうちに着いたら連絡してね」
「ん、了解」
軽いハグを交わすと、仄かなクチナシの香りがした。
駐車場を出てすぐの幹線道路に乗る。いつも車の流れが速いのに、今日はノロノロ運転だ。
カーナビを見やると、数百メートル先から向こうへ赤い矢印が伸びている。
長い車列が完全に止まるのを確かめてから、オーディオのボタンを押す。
晩秋から冬にかけて聴きたい曲を毎年、プレイリストにしている。今年も20曲ほど選んだ。
彼女が背中に手を回してくれたとき、少しだけ震えているのがわかった。
言葉にできない感情でいっぱいだったのだろうか。
そんなことを考えていたら、前の車が動き出しているのに気づかなくてかなり間が空いていた。少し遅れて僕もついていく。
クルマは僕にとって素晴らしい空間。
何故って、一人きりの時間を確保できるし、誰からの干渉も受けないし、何をするにも自由だから。
事実、家にいるより落ち着ける。
途中でいつものコンビニに寄って、コーヒーブレイク。
コーヒーじゃないけど。
新商品らしき温かいティーラテを買ってみた、烏龍茶ブレンドで美味しかった。
いつもより1時間遅れで帰宅。
Cちゃんにメールしてからさっとシャワー浴びて、電話を見たら返信があった。
今日一日とても楽しかった、電器屋さんに連れ出してくれて助かった、夕飯に感動した、と。
ほかにも。
プリンターの入れ替えは自分でできるから心配しないでほしいこと、急に感情が変わるのは PMDD のせいなので僕が悪いわけではないこと、長話を聴いてくれたりスキンシップを取ってくれたりするのがうれしく、自分が大切にされていると感じること……。
それを読んで安心7割、反省3割。
「今日はすごく疲れていると思うし、早く仕事に出かけると聞いていたので返信はいらない、とにかく早く布団に入ってほしい」とあった。
あの子だって相当疲れてるだろうな。
改めて連絡するとだけ伝えて、眠りに落ちた。
♪キャラメルミルク / CHARA
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
小瓶主さんの想いを優しく受け止めてあげてください