彼女を BRZ に乗せるのは何ヶ月ぶりだろう? いや1年以上か。
久しぶりだし、病み上がりの身体ではこういう低い車はつらいよなぁ。
乗れそうか訊いたら「たぶん平気」って言うんだけど、僕のほうが不安で。
――肩と腕貸すから掴まって。
――ゆっくりでいいよ。
――腰の据わりが悪い感じはない?
大丈夫みたい。よかった。
一箇所で用事が済ませられる SC へ車を走らせる。
お薦めリクエストを受けて、道中に「鶏肉と白ぶどうのワイン煮」を提案。節目節目の大事なときに作ってるんだけど、今年はこれが初めてだな。
「ワインで煮るの!? 私酔わないかなぁ? もし酔っ払っちゃったら介抱してね(笑)」なんて言うものだから、僕も「了解。まぁアルコールは大方飛んじゃうからあれだけど、何らかの理由で意識が遠のいてきたら教えて」と返したら、彼女は助手席でくすくすっと楽しそうにしてた。
あれは杞憂だったかな。そうだといいけど。
生ものは後がいいねってことで、先に電器店で複合機を見た。
本人の希望で、プリンタードライバーやユーティリティの画面操作が同じ or 近しいやつを調べた結果、同じメーカーの後継機種に決定。
本体の色が黒→白になって「部屋が明るくなるかも?」と彼女も満足げ。
値段も、競合店のネットストアのそれに合わせてもらえて、最終的には同じ条件で速く手に入った。
いい買物ができてよかったね。
Cちゃんにはベンチで休憩しててもらって、買った箱を車につけるのに駐車場の棟へ戻る。本館との連絡橋を渡ると秋の風の匂いがした。
地下の食品売場に移動したあとは、二人で食材をたんまりと買い込む。
肉料理に合わせるぶどうは輸入のやつがいいんだよー、皮ごと食べられてとびきり甘いのを煮ると美味しいよー、なんて言いながら。
僕のはマッシュルームを入れるレシピなんだけど苦手? って訊いたら「ううん、なめこ以外なら食べられるよ。定食のなめこ汁を完食してみたいけどなかなか克服できないの。ぬるぬるよりも、柄の部分のグズっていう歯ざわりがね……」と。
なるほど。しかし意外にピンポイントだな。
◇
すっかり荷物が重くなってしまったけど、無事にCちゃん宅の前まで帰還。
トランクから降ろして2階まで運ぶあいだ、彼女が見張りを買って出てくれたので運転席に座っててもらうことに。
「何もないと思うけど、もし何かあったらチョイ左に寄せといてほしい」
彼女、車は持ってないけど MT 免許保有者。だから BRZ も転がせるし、一緒に出かけた先で僕が片頭痛に襲われた時には運転を交代してくれるんだ。
「警察も、変な人も来なかったよ!」との報告を受けて礼を言い、シートからゆっくりと降ろし、部屋の鍵を返して先に上がっててもらう。
いつものコインPまで運転して、一つしか空いてない枠に後退でササッと停める。エンジンを切って背もたれを倒し、深呼吸。目を瞑ったまましばらくじっとしていた。動くのが少しだけ億劫だったから。
(どうしたらいいんだろう)
僕もまた、答えのない問いと対峙している。
♪STOP, LOOK, LISTEN (TO YOUR HEART) (with Diana Ross) / Marvin Gaye
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