学年中に俺の悪口が渦巻きだすのに、あまり時間はかからなかった。
父さんと母さんは全てを鵜呑みにして、どっちの育て方が悪いと毎日大喧嘩、結果家族は離散した。
学校にいけなくなった俺のもとに、毎日彼奴が訪ねに来た。
心配し過ぎだと思ったが、正直嬉しかった。
その後瑠夏がどうなったのか、俺は知らないまま卒業した。
児童相談所で働き出すようになってから、いじめる子にも事情があることを知った。
無関心な親の気を引きたかった少年、親からのストレスをどこにぶつけていいか分からなくなってしまった少女。
(もしかしたら、瑠夏にも何かあったのかも知れない。)
いつしか俺はそう思うようになっていた。
もしまた会えたら友達に戻れるかもと、そんな淡い期待を抱いていた。
そんなものはすぐに壊されてしまうと知らずに。
「失礼するね。今日の体調はどうだい。」
一時保護中の子の部屋の見回りから一日は始まる。
最後の部屋は、昨日からいじめ加害によって保護された男の子だった。
「おはよう。よく眠れたかい。」
そう問うと、彼はつまらなさそうに、生意気に答えた。
「子供扱いしないでもらっていい。」
いじめをした子が素の自分を見せるのには、長くかかるとよく分かっていた。
そういう子には多くの刺激を与えず、尚且つ寄り添ってあげることが大事だと学んできた。
「そっかそっか、ごめんね。さて、この後時間空いてるし、君と話をしたいな。」
すると彼は興味を示したようで、話したいと頷いた。
子供らしい一面にひとまず安心していると、彼はいきなり俺の頬を打った。
「いっ……。な、何するんだい。」
「僕さあ、楽しいんだよね。こうやって、人のこと虐めるの。」
そう言って馬乗りになる少年の顔は全く楽しそうではなく、むしろ苦しさが滲み出ていた。
「やめろ。それは君のためにも俺のためにもならない。」
どうにかして打つ手を止めさせようと、彼の両手首をぐっと捕まえました。
と、彼はあーあーと暴れ出しました。
「僕、僕は、僕はさあ!楽し、楽しいから、だから虐めて、るの!」
嘘じゃないんだと泣き喚く彼を、五人ほどの大人が囲んだ。
少年がこうなったのには、誰か原因がいる気がしてならなかった。
その首謀者を想像しようとすると、頭にふっと浮かび上がってくる記憶があった。
『私だけは味方よ。』
その日は、彼奴とともに暮らす家に帰れなかった。
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