昔の話。─────
バイト先の人達とけっこうなかよくなった頃、
その女がみんなで飲みに行こうと言った。
ビアガーデンに行こうと。
わたしはいいね!と言うも、みんなはっきりは言わないが浮かない表情。
なんで?飲みに行きたくないの?
とひとりひとりと掛け合うと、
「飲みに行くの自体はいいんだけど……」
と言う。
ごにょごにょと言いづらそうに、
「あの人が男の人を呼ぶから」と。
なるほど。
その人は確かにおとなしそうなくせしていつも明らかに男に媚びを売ってるやつ。そういう事を言いかねない。いや、言っているのだろう。この様子。
「そんなん、そういう話になった時にみんなで断ればいいじゃん!」
とわたしが言い、みんな行くことにした。
正直、わたしの見積もりは甘かったと後で知る。
飲みの日まで、男の人の話など一切なかった。
よかった。と思っていた。
ここでもう考えなくてよくなったのだと思っていた。
ビアガーデンは前払い。お会計をした直後、
なんだか知らない男が1人現れて、偶然というようにその女に挨拶をした。
「ちょっと話してくるね。」
とそいつが言い、わたし達から離れた。
「はーい。いってらっしゃーい。」
とわたしは気にしていなかったが、
しばらくしてから、そいつはその男を連れて戻ってきた。
向こうに仲間(男)がいるから一緒に飲まないか。と。
これ、どういう事かわかる人いるかな?
ぜんぶ計算ずくなんですよ。
ビアガーデンは前払い。会計も済んで、奢るとか気にしなくていいんですよ。
みんなの表情がくもってました。
あー。みんなが言ってたの、こういう事か。
全てを察しました。
わたしはみんなを誘った責任を感じていましたから、先頭に立ちました。
ほんとはもうこの時点でけっこう腹立ってました。
知らねーナンパヤローならもっと強めの態度を最初からしましたが、いちおうその女の顔を立てる事を考えて、
最初は、
「このメンバーで飲みたいんですみませーん。」
と断りました。
男は驚いた様子でした。
いつものシナリオと違ったのではないでしょうか。
女としばらく相談したり、陣地に戻ったりした様子の後、しつこくもまた来て、
今度は目の前でその女と相談したり、うちらにお願いしたりしてきました。
もう、かなり腹が立っていましたが、
やはり色々と顔ってもんがあるでしょう。
でももちろん応じるつもりはミリもないので、
色々考え、
「お断りー!」
と酔っぱらったマネをして言ってやりました。
可能性を感じないように。
もう取り付く島もないと感じさせたので、すごすごと男は帰って行きました。
女は少しフォローにか出かけて、
戻ってくるとぶつぶつと言い始めました。
「ねえ、みんなやっぱり行かない?」
とか。
明るい表情になっていたみんながしんとしました。
なので、わたしが、
「わたしは行きたくなーい。
あなただけ行ったら?」
と言うと、
さすがにみんなもこの時は
「そうだそうだ。
そうしたら。」
と言い、
それを受けて女は
「そんな事言われたら淋しい〜!」
と言ってきて、ここでこの話は終わりました。
その後はもう男も現れずにワイワイ飲んで、次カラオケ行く?とか言って移動を始めました。
その移動の途中、
あんな事をしたので酔っぱらったフリの続行と、実際にお酒が入ったので楽しそうなわたしに腹が立ったのでしょうか。あの女が
「そんなに酔っぱらってたらマワされても文句が言えないよ?」
と言いました。
驚きました。
顔は酔ったフリでニヤけてたかもしれないけど、凍りました。
同性が、そんな事言う?
文句言えないって、どーゆー事?
信じられませんでした。
そしてつくづくに、向こうに行かなくてよかったー。と思いました。
次のバイトの時、その時の仲間に
「あれ、ひどくなかった?」
と言いたかったけど、それにはあのセリフを言わないといけなくなるかもと思うととても言えませんでした。ほんと、よくあいつはさらっと言えたもんだ。
仲間からは、あの時はありがとう。とお礼を言われました。
後日談。
その女はこの話を、酔っぱらって自分の知り合いにひどく無礼な態度を取った女として、バイト先の男どもに話し、そいつらはみんなそのように受け取りました。
あと、この人はいつも同じ時間の勤務の人にイジメられているとその男達や上の人達に話し、わたしも勤務時間が違った時はそういう人達からそう聞いていました。
勤務時間が同じになる時、いろんな人から、「あの人には気をつけて。」「あの人はいやな人だよ。」と教えられていましたが、わたしは噂はあまり信じないし、おとなしそうな人という印象しかなかったので、むしろ言ってる人の方をよく思わなかったくらいでした。
男の人と上の人はその人をおとなしいいい子だと言い、
いっしょに勤務したことのあるほとんどの女の人はいやなやつだ。と言いました。嫌っていました。
兄弟に障害がある人がいる、いわゆるきょうだい児だからでしょうか、すごく押さえるところを押さえるのが上手な人でした。
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
▶ お返事の注意事項