彼女はいつも笑っていた。
可愛くて。
みんなから好かれてて。
クラスで一番の人気ものだった。
ある日の放課後。
ふと立ち寄ったトイレで。
彼女が泥だらけになって壁に寄りかかっていたを見た。
あまりのむごさとその変わり様に。
私は逃げ出してしまった。
次の日も彼女は笑っていた。
昨日のことがまるで夢のように思えた。
だから訊いた。
すると彼女は身動きをせずに立ち尽くしてしまった。
そして一枚の写真が落ちた。
目にしたその写真から目を離せないままでいると。
だんだんその写真が濡れていくのが分かった。
数日後。
彼女は死んだ。
その詳細の載ったプリントが。
涙でいっぱいになるまで私は泣いていた。
みんなもひっくひっくと肩を上下させながら俯いていた。
一限目は移動教室なので。
遅刻寸前まで泣きじゃくっていた私の耳に。
授業開始のチャイムが届いた。
席を立って机を離れると。
開け放たれた窓から僅かな風が吹き込んできた。
風の所為かみんな机から。
先のプリントが落ちてしまったみたいだった。
けれど最後列の端っこで。
一番窓に近い私の机の上のプリントは落ちなかった。
みんなの”さらさらな”プリントを拾い机に置きなおした後。
無人の教室を後にした。
彼女は人気”物”だった。
私は今も大切に持っている。
彼女の涙でしわくちゃになってしまった。
彼女の引きつりながらも笑った可愛い顔の写真を。
『人気のある顔写真』
おわり。