まだ私が10代後半だった頃。
母親と大喧嘩して、その他にもいろんな事が重なってズタボロだったあの日、友達の家に行った。
その男の子は、
「腹減ってないか?ちょっと待ってろ。」
と言って、梅干し茶漬けを作ってくれた。
私が食べ終わるまで、それを黙って見ていた。
何があったのか私も話さなかったし、向こうも何も訊いては来なかったが、私の様子から何かあったんだと察したのだろう。
何を考えたのか、いつもの強面のイケメンっぷりをかなぐり捨てていきなり、
「俺の胸でお泣き!」
と、おどけて両腕を広げて
「ねーむれーねーむれー母の胸ーにー」
と、シューベルトの子守り歌を歌い出した。
その部分しか知らなったみたいで、それだけを調子っぱずれで何度も繰り返した。
私はあまりの事に、唖然として目が点になってしまい、大爆笑した。
その後、なぜか涙が止まらなかった。
気が済むまで泣き続けている間、その男の子はずっと黙って隣にいてくれた。
怖い先輩から殴られたってやり返して、泣いたりした事なんてない私が泣くのを、ただ黙って隣に座って泣き止むまでそうさせておいてくれた。
なぜ、シューベルトの子守り歌だったのかはいまだに謎だが、その男の子なりに一生懸命に慰めようとしてくれたんだと思う。
それから、もう1人の別の友達も呼んで、部屋いっぱいに3枚の布団を並べて敷いて、私を真ん中にして川の字で寝た。
寝る時に、でっかい手で2人が交互に頭をゴシゴシと撫でてくれた。
ご飯を食べさせて、子守り歌を歌って、頭を撫でて、川の字に寝かしつける。まるでお母さんみたいだ。
背の高過ぎる、リーゼントのお母さん。
もちろん、それ以上の事はなにもなかった。
それどころか、その男の子達は、何か勘違いして私に近寄って来る男子達を遠ざけるために脅すような人達だった。
次の日の朝、3人とも何事も無かったかのように、いつも通りの感じに戻っていた。
あの時はありがとう。おかげで思いっきり泣けて、安心して眠れたよ。
調子っぱずれのシューベルトの子守り歌の事は、もう1人の友達にも、他の人達にも黙っていた。
あまりにもイメージが崩れてしまうからね。
♪シューベルトの子守り歌♪
フランツ・シューベルト
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すごくやさしい言葉をかけてあげてほしいです
とりす
奏良さん、お返事ありがとうございます。
うん、めっちゃいい友達でした。
めっちゃ喧嘩が強くて凶暴で、まだ高校生なのに夜のお店でバーテンダーをしていて、女子からモテモテの不良少年でしたが、当時、家にも学校にも居場所がなくて、荒れてやさぐれた嫌われ者の不良少女だった私をいつもかばって、すごく優しくしてくれました。
最初は私を嫌っていた、後から来たもう1人の友達と仲良くなれたのも、その男の子のおかげでした。
その男の子がいなかったら、高校も卒業出来なかったかもしれません。
みんなにも、たった1人でもいい、そんな優しい友達が出来たらいいな。と思います。
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