あなたは誰?
……いや私、あなたのこと知ってるわ。
アルバムで見たし、なんならすぐそこに飾ってる写真に写ってる。
そう、あなたはわたし。過去のわたし。
何をしにきたの。
あなたくらいの頃、希望に満ちていた。これ以上わたしのこと見たら絶望してしまうわよ。
純粋で明るいわたしなんてとうの昔に消えたわ。
なに?説得でもしにきたの?
今更なにを言うの?
わたしはもうあなたのことを直視することすらできないのに。
そう。あの頃、あなたくらいの頃。
夢と希望があったわ。
動物が大好きで、将来は動物のお医者さんになる!とか、博物館ではたらく!とか、いろんなことに興味を持つたび夢が変わっていって、膨らんでいって、楽しかった。
そうよね。
あの頃はどうやって実現しようとか、その道を進むにはどうしたらいいかとか、どんなスキルがいるかとか。考えなくて済んだんだもんね。
夢は待てるだけ持てみたいな。
叶えられるかなって考えずに、ただただ叶えたいとしか考えてなかったよね。
あの頃は馬鹿だった。
今のわたしは、愚か者だ。
夢をたくさん持とうとか、大きな夢を見てとか。
そんな容易に考えることは出来なくなった。
だって叶えられっこない夢を見て、実現しなかったり、失敗したりといった経験をたくさんしてきたから。
そう、ただただ逃げることしか考えてないんだ。
やらなきゃいけないことすらできない。
わたしは自分にあますぎる。
ねぇ……わたしのこと、あんまり見ない方がいいわよ。だってあなたにこうなってほしくないから。
もし人生をやり直せるならば、もう一度あなたくらいの歳に戻れるならば、今からでも取り返そうと思うだろうか。
多分ね、もう今更、そんな勇気もないんだと思う。
今から人生やり直しても、きっと何も変わらないわ。変えられないわ。
ずっとずっと……わたし、あまり変わってないのよ。わがままなとことも。自己中なところも、夢見がちなところも。
わたしずっと幼いままなの。大人になれない。
それどころか、あなたのような素直さも、明るさも、コミュ力も、無くなった。
どんどん悪い方向に進んでる。
ごめん。ごめんね。
こんなになっちゃって。
今のうちにしあわせを噛みしめときなさいよ。
これから先、今ある当たり前の幸せは、貴重なものになるんだから。
あなたが……そしてわたしもいつか……
沢山のしあわせを感じられますように。