その城は、巨大な砂の上に、建って居た。城の中は、炎が燃え盛っている。今にも、頭上から焼け落ちそうだ。姫はその中に座って居た。[ひめさま!!!!]一人の鎧をみにまとった家臣の青年が、姫を抱え上げたかと思うと、城の、下に広がる砂の中に飛び込んだ。砂は、海となり二人の体を飲み込んで行った。
ゴボゴボゴボ[く...苦しい...息が出来ない...助けて...][は...早く早くあの光の方へ...]
[ぶはっ!!!]
[ここは?]
そこは知らない街だった。見たこともない建物がそびえ建っている。その建物たちは、天高く背を伸ばし、空に穴が開いてしまいそうだ。けたたましい音と、煙と、鉄の塊に車輪のついた箱のようなものが走ってゆく。異国の風俗をみにまとった人間たちが、珍妙な様子で歩き回っている。ふいに、その中の集団のうちの一組が、こちらにやって来た。[お姉さんびしょ濡れじゃね?][大丈夫?]年の頃は自分より少し上といったそのおなご共は、口々に何かを云いながら手に持った鉄の板を光らせて何やら物珍しい様子だった。その目からは好奇と、少し此方の様子を案じる風が見てとれた。[案ずるな。妾は無事である。]そう云いかけたが、ここは異国の地。何があるか分からない。その考えが胸によぎり、姫は口をつぐむと、咄嗟に駆け出して狭い建物の間に走っていった。