春が嫌いだ。毎年3月になると、何かがおかしくなる。
仕事はいつも通りできるし、家族とも普通に話せる。なのに、一人になった途端にそれは起こる。
わけもなく悲しかったり、寂しかったり、辛かったり、昔あった嫌なことを思い出したり。そんな状態が4月が終わるまで続く。
もともと春は好きな季節だった。
寒い冬が終わり、日が伸びて、あたたかい日差しにやさしい風、次々に芽吹く草花。
春の気候のことは今も変わらず好きだけど、どういうわけか気持ちだけが沈んでいる。
負の感情が頭を巡る。普段ならすぐ忘れられるようなことさえ気になって、自責の念に駆られる。
理由がないので原因もわからない。4月が終わるまで耐えるしかない。
はやく5月になればいい。
そういえば昔、そんな名前の話があった。小学校5年生の頃に教科書に載っていた。
好きだったような気がするけれど、どんな話だったのか、今となってはもう思い出せない。思い出せないことばかり。
ひたすら、5月になれば、5月になればと祈る。5月になったって、何かいいことがあるわけでもないけれど。
待っていてもいいことは来ない。自分で探しに行かないと。5月になったら何をしよう。1人でこっそり海でも見ようか。