「楽に死ぬ方法」と泣きながら光る窓に打ち込まなくてもなんとなく生きることができる今の私。
首を絞めるためのベルトを片手に隠し持ってトイレに駆け込むあのときのわたし。
本当は咎めてほしかった。届かない。
助けは結局いくら待っても来なかったから、仕方なく救難信号を出すのをやめたのだ。幸いここには、少なくとも数日分の食料はある。
夜中にこっそりカーテンの隙間から夜空を覗かなくても、非常階段で空を見上げて雲の写真を撮らなくても、私を守ってくれるものは少しだけ増えたから。
悔しかった。本当は今でも逃げてるだけなんだって誰よりも私が一番わかってたから。
大人になるのを怖がってたわたしは案外簡単に体だけ大きくなってしまった。心はいつまでもこどものままだ。