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20年前の僕の家族へ。奇妙な手紙の、書き出しはこんな感じでいいだろうか――。 こんにちは、お久しぶりです。痛ましくも宝物だった時間たち

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こんにちは、手紙を拾ってくれてありがとう。僕の名前は×××。今は××という街に住んでいて、好きなものは××だよ。
今の僕について、詳しい事は書けないんだ。仲間にそう約束しているから。許してほしい。

ここ最近、心にぽっかりと穴が開いているみたいな感じがする。最初は小さくて無視できるくらいの穴だったけれど、今では、残業なんかして疲れて帰宅したときに、うっかり落っこちて体を痛めるくらいの大きな穴になってしまった。

今日は休みだ。幸い、午後からはやることも行く所もない。だから、手紙を書くことにした。20年前の僕と、僕の父と母へね。

奇妙な手紙の、書き出しはこんな感じでいいだろうか――。
こんにちは、お久しぶりです。痛ましくも宝物だった時間たち。それを思い出すとき、僕はあなたへの恐怖と、自分への後悔に泣き出しそうになります。

最近もそうですが、20年前も、ひどいニュースばかりで、気が滅入るばかりでしょう。
皆はよく言います。子供は親を選べない、ってね。おばあちゃんも、僕にそういっていたっけ。「あんたは産まれる所を間違っちゃったのかねぇ」って、けたけた笑ってたよ。

ねえ、少しだけ、長い言い訳をさせて。
僕はいつも失敗ばかりだ。僕は馬鹿で、手がかかる子で、失敗作だったさ。いつも、一番いいものを選べなくて、皆の中で遠慮していた。だけどね、選んだものを、自分にとっての一番にする秘密を知っている。きちんと向き合って、一生懸命大切にすることだ。それを愛することを自分の幸福に出来たのなら、間違いなく世界で一番になる。

だけどね、記憶の中の父さんと母さんは、お酒の入ったコップを持って、そっぽを向いている。アイコンタクトの概念のない、臆病で神経質な家庭に、クモの巣みたいにはびこる暴力が、僕を責め立てる。
「あんたさえ、あんたさえ!」

だけどね、僕は世界で一番お母さんのご飯が好き。それが冷凍商品であっても、レンジを使えるお母さんは素敵な魔法使い。お母さんの水仕事で鍛えられた手が好き。ありがとうを言うときに見える、髪留めが綺麗。僕もヘアピンが欲しいって言ったら、久しぶりに大笑いしてくれたんだ。

僕は世界で一番、お父さんとのお出かけが好き。電車を見に行こうと、線路沿いまで一緒に歩く片道10分。小さな体には怖いくらいのワクワクが詰まってる。僕が手を振ると、電車の中から振り替えしてくれる見知らぬおじいさん。そして、横で笑うお父さんの笑顔が、すごく嬉しい。

お母さんへ。
女という重圧に、母という重圧に、怒り狂うあなたを見て、殴られた頬以上に胸が苦しい。
社会が悪い、身内が悪い、職場が悪い、私ばかりと喚く、酔い潰れた夜。
父さんはうんざり顔で「また始まったか」って、嫌味で留目をさしてから二階に逃げていく。
リビングに残された僕は「大丈夫だよ、お母さん」とご機嫌をとる。
母さんは、焦点のあってない目で僕を見つけ出すと、酔ってむくんだ顔でにんまり笑って、話始めた。この不幸な結婚への怨み辛みを。
僕は言った、ごめんねと。
本当は子供なんか欲しくなかったんでしょ。
でも、僕にはお母さんしかいなかったんだ。

お父さんへ。
親が何かなんて、家庭が何かなんて、教えてもらえなかったから、ただ、どうにかなると思って衝動的に突き進み、どうにかさせようとする世間を憎むあなたをみて、どうすれば笑顔になってくれるか考え、眠れなくなる。

些細なことで始まった母さんとの口論が、掴み合いの喧嘩になった。いつもと違う、尋常じゃない喧嘩。僕は慌て、二人の間に割り込んだ。

怒りと恐怖でもみくちゃになった時だけ、僕の家族は一体になる運命なのかな。

僕たちは川の字になって、チェストの上の物をなぎ倒して倒れこむ。さっきまでそこに誇らしげに飾られていたはずの、僕が紙粘土で作ったウサギさんが、母さんの下敷きになって粉々になった。先生も父さんも、誉めてくれたやつだ。
母さんは再び父さんに詰め寄ったけど、父さんははっと我に返って、僕に向かって「ごめん」って言ってくれたね。
変な話だけど、それが嬉しくて、ほかのことはもう、どうでもよくなってしまったのを覚えているよ。もしかしたら、粉々のウサギさんは僕自身だったのかもしれない。
母さんが泣きながら包丁を持ち出して――あれ、それからどうなったんだけ?

お互い向き合うことに疲労しか感じられなくなった、臆病で神経質な家庭に、クモの巣みたいにはびこる暴力が、僕を無力にする。

だけどさ、やっぱり好きなんだよ。笑顔が嬉しいし、誉めてほしいし、一緒に楽しいところに行きたいし。
泣きじゃくるお母さんを、責められるお父さんを、次は僕が守ってあげるよ。

たぶん、こんな目にあってまでそう強く思ってしまう僕は、やっぱりこの二人を選んで生まれてきたんだ。ただ、命を受けたあと、どんな運命が待ち構えているのか、知らなかっただけさ。当たり前でしょう、子供は希望であっても、神様じゃないんだからさ。

だからさ、もし返事をくれるのなら、教えてほしいんだ。
ねぇ、お父さんお母さん。僕は二人の敵じゃないんだよ。どうしていつも必死に傷付けたがるの?

最後に、20年前の僕へ。

やあ、元気かい?なんて聞かないよ。生きてるのが不思議って感じなんだからさ。
今日も明日も、誰も、何も信じないんだろう。
進んで悪者になって、ピエロになって、罵倒されるたびに、我慢強くなって、いつか家族に必要とされるんじゃないかって夢を見てるんだろう。
君が稼げるようになったら、そこの家庭に居場所が出来るだろう。金で買った居場所が。彼らは君に甘え、身内の罵詈讒謗を夕飯のたびに聞かせ、君から優しい慰めの言葉が出てくるまでプレッシャーをかけるだろう。

だけど、よく聞いておくれ。死ななくても大丈夫だ。君は悪くないから。君は悪魔なんかじゃない、夫婦の不幸の元凶ではないよ。だから、クローゼットから出ておいで。
家族が君を悪魔と呼んだとしても、血の繋がっていない人々が、君を友達と呼び始める夜明けがある。
外を見るんだ、外に出るんだ、助けを呼ぼう。

実際――僕達家族には、助けが必要だった。だれも、心がまとまに呼吸をしていない。あらゆる中毒が絡み合い、毒に満ちた一軒家で、僕は従順な子の役目に倒錯した。


僕の名前は×××。××という街に住んでいて、今日はたまたま休みがとれた。仕事は××で、最近はボチボチって感じさ。

警察の人と、役所の人に言われてるんだ。居場所が絶対に分からないようにしなさいって。連絡先も教えちゃいけない。戸籍に閲覧制限をかけるタイミングで、携帯の番号もかえた。GWも盆も年末年始も、地元に帰るとこはない。夜遅くのLINEの通知音にびくりとすれば、気を使ってくれる友人からの便りで苦笑いだ。

始めて警察へ向かった時、片目の潰れた僕は友人に抱えられていた。役所の人達は親身になって閲覧制限手続きの説明をしてくれ、僕を受難者みたいに扱ってくれたが、僕の脳裏に浮かんだ言葉は「お父さんお母さんに怒られる」だった。

みんなが満場一致で僕にこう言った。
「両親のもとに戻ったらダメだ」って。
僕は歯を食いしばって、分かりましたといった。僕がまだ子供だったのなら、そんなことは出来ないとすがっただろうと思う。

時々、何が間違っていたのだろうかと、ふと虚しくなる。
父さんはどうしているだろう、母さんはどうしているだろう。仲良くしてるのかな。僕がいなくなって、ちょっとは楽チンになった?

「あんたが勝手にお腹に出来ちゃったんだもん。お母さんね子供なんか嫌いだったけど、出来ちゃったら仕方ないじゃん?」
「お前なんて、母さんが勝手に産んできたんだ。俺は知らないぞ」
「あんたが生まれなけりゃ、皆不幸にならなかったのにねぇ、おばあちゃんも嫌になっちゃうわぁ。あんたのお父さんお母さんに迷惑ばっかりかけられて!」

だけど、今も考えてしまう。やっぱり僕は家族を忘れたりしない。
伝えたくなってしまうんだ。
ありがとうとか、ごめんねとか、ご飯ちゃんと食べてるの、とか。

同時に今、はっきりと分かる事がある。
僕は被害者であると同時に共犯者だった。
加害者の罪まで被って、彼らを悪者にしないよう努力していた。共依存は僕の存在があって成立したガッチリとした洗脳だった。
そして洗脳から逃れるっていうのは、宗教から逃れるって感じだ。

僕は今も、うまく生きられていないような気がする。

時々、悪夢を見る。
帰宅するとアパートの前に、両親がいて、僕を羽交い締めにして車に乗せて、飲酒運転で夜道をガンガン走っていく。地元に近付くにつれて、死も近付くんだよ。

だけど、戻るわけにはいかないんだ。
それは正しいことじゃないから。
父さんと母さんにとっても、よくない事なんだ。

この手紙を拾ってくれた人へ。
手紙を拾ってくれて本当にありがとう。
また小瓶に詰めて、海に放り投げてください。
この手紙には、たぶん行くべき所があると思うから。
僕らに行くべき所があるのとおんなじです。

僕に関して言えば、二度と同じ道は歩まないし、引き返す事もありません。

憎しみが砂になり、悲しみが風になり、海に映る自身の姿に罪悪を感じなくなる日を願って、ただ進むのです。

この日々にあるのは、駱駝の安泰のみです。
こうべを垂れてひたすら歩く駱駝が、荷を降ろしてその身を休めるとき、感じるのは幸福ではなく、乾燥しきった安泰なのです。
父と母と、故郷を忘れた駱駝の安泰です。

不幸な、だけど運の良かった×××より。
世界中に愛を込めて。
81198通目の宛名のないメール
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ななしさん
泣けた(._.)

小説と思っちゃう様な実話かな?
だとしたらこの主人公、人間が出来すぎてて今の自分が嫌になる

皆んな色んな悩みがあるんだな
自分の悩みが大きく見えるけど

この投稿に会えて良かったです
物語の主人公さん、きっといい事あると
思うし、あなたにはあって欲しいです
ありがとうございます
ななしさん
最後の「駱駝の安泰」からの文章が良いですね。私はこの小瓶の手紙を全て読みました。そしてまた小瓶につめて、蓋をし、海へ放り投げます。また誰かが拾うでしょう。
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sakina_0017さんの他の小瓶
変な悩みです。私は人間が怖いです。物凄く。って、自分も人間なんですけどね・・・。人間が怖くて怖くて、仕方がないんです。物心ついた時から。老若男女、子供までです 『おやすみシンデレラ』生きていればいいことがあるなんて、そんな綺麗事言われたら、私はあなたを妬んで、八つ当たりしか出来ないだろう 『不完全』愛しい人よ、たとえあなたが美しい男だとしても完璧な女だとしてもいつかきっと前触れもなく裏切るのでしょう
以下はまだお返事がない小瓶です。お返事をしてあげると小瓶主さんはとてもうれしいと思います。
急に死ぬのが怖いって思った。。。 孤独ったって自分がいんだから自分と他人の距離感で一緒にいりゃいいやんって思う。 生まれてきたくなかった。生きたくても生きられない人には申し訳ないけど、本当に生きるのがめんどくさい。生きていくうえで頑張らなきゃいけないことが多すぎる MBTI変わった。ISFJ になった。性格いいランキング2位だって 早く死にたい。死にたいって言われるの嫌だって。手首傷つけるの嫌だって。もうどこにも発散出来なくなった。 大事にするから大事にして欲しいって言いたいわけじゃないし、求めてる分返せって思いたいわけじゃないんだけどね。大事だと思ってないなら、期待をさせないで欲しいんだ 子供の心配をしなくてすむ日は来るのかな?死ぬまで続くのかな。心配できるうちが幸せなのか。 31歳発達障害の生きる価値なしゴミカスだけど独身はもっとゴミだと発言小町で言われるから、婚活します 何がわかるの? 自分もわかんないのに喉に何かがつっかえる。苦しい。どうしよう。一度落ちると止まらない、落ちていく。苦しいどうしたら良い、辛い 精神的な姉離れしてほしい。2、3年前から気まずい雰囲気なのですが、弟は普段家族に対して無愛想だし自分の話しかしない 全ての愛へ クラス替えの発表があったんです。去年が楽し過ぎて幸せに思っていたのもあって、今年に希望が持てないし、学校なんて行きたくないし、できることなら死んでしまいたいとも思っています 診察は受けても、何も変わらず。相変わらず話を聞いてもらい、薬を処方されただけでした。 なんかもやもやする。理由を探しても、見つかりそうで見つからない。死にたいけど死ぬ勇気はないし、消えたいけど忘れられるのは嫌だ。

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