昨晩は息苦しさ故に寝付けなかった。
寝起きでまだ鏡を見ていないが、さぞや酷い顔色の事だろう。
咳をしては背中を擦ってくれた妻には申し訳ない気持ちでいっぱいだ、今日も仕事があるだろうに。本当に申し訳ない。
今日も息子は起床ラッパで目を覚ました事だろう。
入官して五年が過ぎた。
親父としては、何もそんなに厳しい世界に属さずともいいだろうと思っていたが、彼の憧れと情熱はそれを物ともせず、突き進んでいった。
覚悟を決めた息子の目は、いつぞやかパパ、パパと首ったまにしがみついたあどけない瞳の面影を残しつつ、息子の目ではなく、ある種のもののふの目をしていた。
平時では日陰者、税食い虫と罵る者も居るなか非常に頼もしい事と痛感する。
駐屯地開放日には入官時とはまた違う、戦闘服に身をつつんだ凜とした青年がいた。
息子をここまで男として、日本国民として頼もしく感じた事はなかった。
子供たちと気さくに写真をとり、偵察用オートバイに跨がらせ、優しくヘルメットを被せて、落ちないように支えている姿をみれば、息子が本当に優しく強い男に育ったのだ、と目頭から雫が落ちた。
俺は残す所半年という蝋燭の短さであるが、息子はおそらく俺の死に目には会えない事だろう。
しかし、お前はそれを悔いてはならない。
令和の時代を、よろしく頼みます。
世界一尊敬する息子達へ。