午後になって、家を出た。
用事を済ませたら夕方、すごく寒い。
もう椿も菜の花も咲いたのに、桜までが遠いこの春。
久しぶりの肩が余るダッフルコートの襟を狭めて、ぷるぷる震えながら平気な顔して歩いていたら、なにかが頬をかすめた。
水?
ああ、霧雨か。
交差点に行き当たり、立ち止まる私。
ぽつり、ともいかないような儚い雨粒が、ほつほつと落ちてゆくけれど、神経質な私は傘を広げてしまう。
まだ信号は赤。
柄を握る右手の爪は、青い。
後ろからやってくる自転車3台。
横道で別れて2台。
青になった信号で追い越して進んでゆく女の子たちは、紫色のダウンジャケットを着ていた。
流行っているのかしらね、紫ダウン。
寒い、寒い、お家はまだだ、と脳内で唱えながら、エンジニアブーツを一歩ずつ進めて地道に歩く。
角を曲がったら街灯が減った。
なんだかもっと寒くなった。
治安はいいけど、やっぱり寂しい。
突然ぱっと、脇道から茶色いやつが現れて、遅れて引き綱と男の子が出てくる。
きょろきょろしている犬と目が合った、と思ったらそのまま寄ってきた。
私のふくらはぎに興味があるみたい。
ぬれた鼻が冷たいです、犬さん。
すいません、と謝る男の子に大丈夫と伝えてまた歩き始めたら、ちょっと周りが明るくなった。気がした。
あ、ここからLEDに替えたんだ。
でも、心は確かに白熱灯の明るさ。
なずな
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
小瓶主さんの想いを優しく受け止めてあげてください
ななしさん
なんだか読んであたたかくなりました*文章がお上手なのですね。
紫ダウンは去年流行った気がします(´ω`)
ななしさん
いいですね あなたのメルマガを読みたい感じです
たろ
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
小瓶主さんの想いを優しく受け止めてあげてください