『お前は大切だけどそれが恋か分からない』
1年前 そうあの人は電話ごしに言って、私はその恋にさよならした。いや、区切りがついたって言った方がいいかもしれない。それでも彼は私を大切だと言ったし、私も彼がとても大切であることに変わりは無かったから。
なんだかとてもうまの合うやつだった。趣味が同じで性格が似ていて、なにより根本的な考え方、感じ方が近かったのだと思う。
好き同士かっていうと、うまくは答えられない。2人ともネガティブで打たれ弱くて、支えあっていたんだとおもう。あの人がいたから救われたことが何度もあったと思う。
その電話以降も私は毎日、彼にあって、メールをした。馬鹿っ話ばかりの会話だった。男子同士みたいな、たわいもない会話。私には彼の言葉一つひとつが、とても大切だったんだ。
4月。卒業して、私達2人は別々の生活を始めた。違う学校、彼がどうしてるか知る術は減ってしまった。会うこともめっきり減って互いに忙しくて。でも私は心のどこかで『彼に一番大切に思われてるのは私だ』って確信があった。私は彼のことがまだちゃんと好きだったし、彼が辛いとき頼ってくれる自信があったんだ。事実、風邪で辛いとき連絡をくれる相手は私だった。『自分と同じ気持ち』だって信じていたかったんだと思う。
悲しみは突然のものだ。
2ヶ月後の事だった。
彼に彼女ができた。
私がいくら愛してもなれなかった地位に、名前も顔も知らない誰かが、ついた。私の横には彼はいないのに、彼の横には誰かがいる。その事実を受け止めることが、悲しくて悲しくて仕方が無かった。たくさん泣いた。私は恋愛として彼が好きだったけれど、彼は違ったんだって思い知らされた。
メールをするのに気が引けて、会っても目をそらすようになった。受け止められなかった。受け止めたら、今までが風化してしまいそうで怖かった。
それから私は忙しくて、たまに『楽しかったあの頃』を思い出しても泣くような事はなくなった。電車で彼とあっても、苦笑いで笑って会話が出来るようになったんだ。下唇を噛むのがくせになったのはこの頃からかもしれない。
私は『彼は過去の恋の人』と思うようになった。彼は新しい恋をしているのに、自分は引きずってちゃいけない。そういう引け目があった。
そう思うと、新しい恋がしたくて、したくて。恋してると思い込もうとした。でも、どれもうまくは行かなかった。素直に恋が出来なくなってた。
今日、同窓会があって彼にあった。雰囲気もしゃべり方もなにも変わって無かったけど、前より背が高くなってた。この年でも背が伸びるんだなって少しびっくりすると同時に、会っていなかったことを実感した。
幹事の私に彼は何度も『お疲れ様』って『ありがとう』って笑いかけて、優しさは変わらないんだって思ったんだ。
家に帰ってきてから、彼とメールをした。1年前と変わらない、馬鹿っ話。彼女とはまだ続いているらしかった。
『変わらない』ということに気がついたら、急にボロボロと涙が零れた。
彼はまだここにいる。少し手を伸ばせば届く、私と少しだけ違った世界にちゃんといる。過去なんかじゃなく、今を生きてる。
あぁ まだこの人は私にとって 大切な存在なんだ。忘れようとする必要なんて無かったんだ。大切な気持ちは色褪せないんだ。忘れちゃいけないんだ。
そう 思った。
彼を忘れたくない。彼はずっと私の近くいる。きっとずっと。どんなに年をとっても。
[この宛メをメールで取り寄せ(空メ)]