小説を書いて、生きるひとになりたい。
ことばがたまってくるたびに、いやこの頃ではなにもない日でも、時間をつくっては書いて書く。
いろいろと筋を立てて話を動かしていくけれど、ふと、ほんとうに書きたい景色はほんのいくつかであることに気づいたりする。
そうして、書きはじめたあのころはここではないどこか、の世界を旅することが目的だったのに、いまは 何かが違っていることにふと気づく。
すこしずつ、狭くて濁った色をしていた世界に色がついて、決して触れることはできないと思っていたやわらかなひかりにおもいがけず触れた、ひとときがあって。
私は、せつなくて痛いこのしあわせな思いを時間を、ぜんぶ閉じこめて紡いでいきたい。
じぶんが、そんな祈るような思いで書いていることに、気づいた朝があった。
ずっとむかしにはあたりまえみたいに私を包んでいたはずの、いま ようやくまたみつけた、うしなうことを思うだけで胸が痛くなるくらいに愛おしい、ひかり。
どんなことばを使えば、この紙の上に置いておけるのだろう。
書けば書くほどに、記憶は上書きされてしまう。こんなに綺麗じゃなかった。もっともっと透明だった。
忘れたくないのに、どんどん遠くなって。
かたちにしたい景色は、ずっとひとつだけなのにね。
手は、勝手にどこかの「物語」を書きあげる。
ここで流した小瓶のなかみだって、どこまでほんとうにあったことなのか。誰も知り得ないし、じぶんでももうわからない。
だけれどもう、書かずにはいられないから。
大ぼら吹きだったとしてももう知らない。
ひとこと ひとことに、命を削って生きていきたい。
偽物かもしれないけれど、
そうして紡いだお話の中には、
ほんの抜け殻くらいだとしたって、この記憶が想いが、織り込まれていると信じたい。
そうして、いつかそのひかりが、ひとりだけでもいいから誰かに受け取ってもらえたならば。
大それた、祈りをひっそりと 込めてみる。
…とかとか、ちょっぴり語ってみた小瓶でありました(*´-`) いつもありがとうございます。