私は何者にもなれない。
…やっぱり?
悪いのは性格と目つき、あと根性と顔と口、視力。
良いのは威勢と調子。
頭もそこそこ良いと思ってたけど、どうやらそうでもなかった様子。
勉強は好きだけど科目ってなると。
宿題なんて存在意義がわからない。
でしゃばりのトンチンカンな自覚はあるけど何故か人は集まるタイプ。
一人でいるのも好きだけど、場を盛り上げるのは多分宿命。
誰かのために何かするのは苦じゃない。
でも自分の正義は貫きたい。
趣味はマンガと嘆くこと、掃除と人参が苦手。
たぶん、平安貴族に生まれてたらそれなりに名はあげてた。
革命期のフランスとかに生まれててもそこそこなんかやってた。
平成の日本、一般家庭に生まれた身としては最早何をすればいいのか、何か出来るのかわからない。
嵐の夜は寝にくいだけで、何の未知も到来しない。
何かに選ばれたらわりと頑張って戦うけど、あいにく何にも選ばれない。
だから変身もしないし魔法も使えない。
黒い幽霊団に拐われてサイボーグに改造されることもないし、バスティーユの陥落を見届けて恋人を追うこともない。
昔好きだった子の名前をTwitterで調べてみて後悔したりして生きてる。
たいていのものは既に発見されて常識になってるし、電球なんて最早LEDの時代。
そのうちドラえもんさえ生まれるってこの時代に、特段偏った才能もない私が何を出来るか。
何か出来るのか。
脳髄の空腹を抱えた魔人が現れるわけでもなければ、世界が6つの都市に分かれてるわけでもない。
突然総理大臣の娘だって襲撃されて運命の出会いをするわけでもなければ、悪魔の執事もいない。
トカゲ風の地球外生命体も来ないから、元気を分ける市民の一人にもなれない。
なんにもない田舎に生まれて、なんにもない田舎で育って。
何かあると思ってちょっとした都会に出たけど、女として生きて20年。
痴漢とかちょっとした都市伝説だと思ってるし、人生にモテ期が3回あるなら私はたぶん前世で6回使った。
申し訳程度に中の下フェイス。
高校生活は嫌いだった。
何がかっこいいのか分からないけど、男子の中で真っ白いスニーカーが異様に流行ってた。
女子はみんな同じ髪型でみんな同じ声で互いに隠れてボロクソ言ってた。
そういう趣味の人が多数派で、そういう人達が色々支配してた。
たぶん、そういう趣味じゃなかった私や友達は彼らに下に見られてた。
なんの云われもないけど。
中学まで一度も思わなかった「学校に行きたくない」を高校では毎日思ってた。
あの頃から「私は誰かが主役の物語の名前もない脇役」って感じが拭えない。
交差点で信号待ってる時にチラッと上からのカットで写る人。
何にだってなれると思ってた。
なんでだかアメリカの大統領にだってなれると思ってた。
弁護士にも。
小説家にも。
クリストファーロビンにも。
私は何者にもなれない、いじけた私のままもうじき20の誕生日を迎える。
このケータイがイノセンスだったって言われたら私AKUMAと戦うし、船酔いしなかったら何かしらの実食ったりするし、おじさんの友達のために偽装結婚とかする。
変わる変われるってなるとなんか違う。
今だって変わらなきゃいけないほど酷くない。
ただ平々凡々、波風たたない人生なだけ。
そういう星の下に生まれてないのかもしれない。
それでも私は主役になりたいと思う。
私の人生の、私の物語の。
山もオチもこれから来るのかもしれないけど、明日死ぬかもしれない世の中だから。
私は今一瞬を輝いて生きたい。
その術がわからない。