改札を抜けたところで、彼女は立ち止まった。
スマートフォンをポケットにしまいながら、こちらを振り返る。
「まだ、電車来ないね」
そう言って笑った顔は、昔とほとんど変わらない。
けれど、肩にかけたコートは上等そうで、指先のネイルは駅の照明を鈍く反射していた。
あの頃より、少し遠くにいる人のように見えた。
「久しぶりだね」
「ほんとに」
それ以上の言葉が出てこないまま、ホームの端に並んで立つ。
終電前の時間帯で、人はまばらだった。
彼女は都会で働いているらしい。
忙しいこと、たまに帰れなくなること、同僚のこと。
淡々と話す声を聞きながら、私は相槌を打つだけだった。
私はと言えば、地元の会社で、特別な変化もなく過ごしている。
話すほどのことが何もなく、それが少しだけ恥ずかしかった。
「ねえ」
彼女が、不意に言った。
「昔さ、よくこの駅で無駄話したよね」
覚えている。
終電を一本逃して、寒いホームで笑っていた夜。
何を話していたのかは、もう思い出せない。
「覚えてる」
「だよね」
それだけで、会話はまた途切れた。
沈黙は気まずくもあったが、壊したいとも思わなかった。
電車の接近を知らせる音が響く。
彼女は少しだけ姿勢を正し、バッグの持ち手を握り直す。
「今日はありがとう」
「こちらこそ」
扉が開く直前、彼女が一瞬こちらを見た。
何か言いかけて、やめたような表情だった。
電車に乗り込む背中を見送りながら、
手を振るタイミングを失ったことに気づく。
走り出した車両に、ホームの光が流れていく。
ガラスに映った自分は、昔と同じようで、どこか違っていた。
改札へ向かう足取りは、思ったよりも軽い。
何も起きなかった夜だったが、
それでも、確かに再会だった。
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追記
久しぶりの宛メ、小説を書いてみました。
なんか始め方がよくわからないです。
改善点とかあったら教えて下さい
またちょくちょく来ることになりそうです
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
小瓶主さんの想いを優しく受け止めてあげてください