宛メとは? 宛名のないメールを続けていくために寄付をお願いいたします。

小説「相乗り夜汽車は何処へ行く」星鏡編 第四項

カテゴリ

「また誰かに迷惑かけるなら、この汽車に乗ったままでいいや。」
そう話を終えますと、彼はふうぅと長く息をつきました。
「やっぱり俺がいなくなっても馬鹿やってたんだな、安心した。」
「何でこんな話を聞いて安心できるんだい。」
「これを皮肉っていうんだよ。よく覚えときな。」
へえ、と頷きますと、どうにも視界に異変が起きました。
何と、僕の手や足元が透けているのです。
「これはどういうことだい。」
「そろそろ帰れるってことだ。良かったじゃないか。」
まだ優希とどう向き合うべきかもわかっていないのに、何故帰らなくてはならないのでしょう。
そんな思いを無視して、透明な部分はどんどん増えていきます。
「じゃあな。爺になったら顔見せに来いよ。」

気がつくと、霧の立ち込めた真っ黒な部屋の中にぽつんと立っていました。
暫く呆然としていましたが、何かに会えないかと歩き出しました。
と、霧の奥に誰か少年が座り込んでいました。
(違う。あれは小さな頃の僕だ。)
恐る恐る近づいて見ますと、彼は泣いているようでした。
「僕。どうしたの。」
「……ぼく、またおとうさんおこらせちゃった。」
(そうだ。あの時はただひたすらに、怖かったんだ。)
彼は少し大きくなり、小学校低学年ほどへとなりました。
「それから、学校でわる口言われたりしたんだ。」
(何で感情がないのか、この頃から自分のことを責めるようになったんだよね。)
また彼は大きくなり、数か月ほど前の姿に変化しました。
「後、親友が死んじゃった。」
(悲しかったよな。感情が戻ってくるかもって、期待してたんだよな。)
そして彼は、今の僕と鏡写しになりました。
「親友を……親友を、傷つけちゃった、ふたりとも。」
(何で止めてあげられなかったのか、無力感に失望しちゃったよね。)
と、彼はまた小さな頃の僕になり、僕に抱きつきました。
「ぼく、ぼくはただ、あい、あいされた、かっただけでっ……!」
嗚咽を漏らして泣くあの頃の僕は、僕の感じる思いを小さな身体で受け止めていました。
僕は申し訳なさでいっぱいになり、僕を抱きしめ返しました。
それから、とうとう初めて泣きました。
「ごめんね。僕はあの頃の僕に、こんなに背負わせてしまったんだね。大丈夫。これからは僕、逃げないから。もう抱え込まなくて良いんだよ。これからは僕の一部になるんだから。」
僕と僕はいつまでも、抱き合っていました。
二人の僕を包みこんでいた一番大きな幻灯は、いよいよ小さくなりはじめました。

228844通目の宛名のないメール
この小瓶にお返事をする

お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います

▶ お返事の注意事項

以下はまだお返事がない小瓶です。
お返事をしていただけると小瓶主さんはとてもうれしいと思います。

宛メのサポーター募集
お知らせ
お知らせ一覧
宛メサポーター募集 LINEスタンプ 宛メで音楽 宛メのアドバイザー石渡ゆきこ弁護士 宛メのアドバイザーいのうえちかこ(心理士・カウンセラー) 悩み相談ができる相談所を集めたサイト
宛メについて
お返事のこころえ(利用者さんの言葉) 宛メに参加している人たち(利用者さんの言葉) 宛メとの出会い(利用者さんの言葉) 初めての方 Q&Aヘルプ 宛メ、サポーター募集! 運営委員のご紹介 運営委員ブログ プライバシーポリシー(みなさんの情報について) 特定商取引法に基づく表示(お金のやりとりのルール) お問い合わせ 運営会社
X・Facebook・Instagram
フォローやいいね!すると宛メの情報が届きます。
緊急のお知らせなどもこちらから配信しますので、ぜひ登録をお願いします。