それでも君は、救えなかった
紙の中身を読んだ私は、膝から崩れ落ちた。
認めたくない。でも、認めなくちゃならない。
那央ちゃんと萌さんの間に、いじめがあったことを。
『萌ちゃんをいじめるのが辛くて、毎日学校に行きたくない。でも、やらなーゃーーーんが救われない』
何だろう、このふやけた場所。
水に濡れたのかな。字がぼやけてしまってよく読めない。
涙だったりするのだろうか。だったら嫌だな。那央ちゃんは、誰にも知られたくないところで泣いていたことになる。
そしてこの文章における唯一の救いは、那央ちゃんが人をいじめるという行為に苦痛を感じていたことだった。
「真央さん。あの、これ」
震えながら差し出した紙を、真央さんはすぐに受け取ってくれる。その素早さは恐ろしく、私が余りにもひどい顔をしていたのだろうかと思う程だった。
すぐに文章に目を通した真央さんは、ふっと空気に溶けてしまいそうなくらい小さく息を吐く。
「那央は、こんなことするような子じゃないのよ、本当よ。私の那央はひたすらに明るくて、誰よりも優しくて、だから」
真央さんの憔悴しきった顔に、泣き笑いの表情が浮かんだ。
───知っている。知っているから、私達は今つらいのだ。
もしかしたら、那央ちゃんはそんなことをするまでに豹変してしまったのかもしれない。でも、いじめるのはつらいとあるから、良心と戦っていたのかもしれない。
あるいは、そんなことをするまでに追い詰められていたり、そう変わらざるを得なかったのかもしれない。
想像すればするほど、那央ちゃんの “本当” が分からなくなってくる。身近にいた人だったからこそ、尚更それがもどかしかった。
本当だと分かるのは、那央ちゃんは優しかったということ。いじめがあったということ。
そして、那央ちゃんと萌さんはもう帰ってはこないということ。
「那央ちゃんは、こんな風に走り書きするくらい、いじめをするのがつらかったんですよね。だから、一緒に死んでしまったんですよね」
真央さんに言っているはずなのに、私の言葉は深く自分に刻まれていく。視界がぼやけているのは、涙の残骸が溜まっているからなのか、目の焦点が合っていないからなのか。
「でも、なんで。なんでそこまで、萌さんをいじめる必要があったんでしょうか……」
ひどく核心に、真実に迫っている感覚がしないでもない。だけどこの疑問は、どこから削り取っても答えをあらわにしない気がした。
「分からないわ。そうね、でもその通りよね。那央が楽しみを求めて人をいじめる訳ないわ」
同じようなことを繰り返すばかりの真央さんに、私は視線を向けた。
「もちろん、そうに決まってます」
那央ちゃんにとって、萌さんはいじめる必要があった。何故なのか。
私の頭には、あの人の顔が思い浮かんでいた。
あの人なら知っているはずだ。そして今の私になら、教えてくれるはずだ。
真実を。
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!
前に小瓶を流した通り、小説本編の続きのメモが全て消えまして、投稿頻度がもはや(微動だにしない)石ほどという…最悪最低です……。
期始テストがあったり、私が尊敬する方がなくなってしまったり、部活が丸一日や土日どちらともあったりして、すっかり筆が遠のいてしまいました。筆無精とはまさに私のこと、、
これからも、きっと投稿頻度はかなりゆっくりになってしまうと思いますが、「あっ、ようやくまた出してる。相変わらず遅いし下手だしどうしようもないなぁ」程度で気長に見守っていただけると幸いです。
感想や評価をくださると励みになるので、是非お時間ある方はお願いします。それではまた!