拝啓
あんたが嫌い。今まで出会った誰よりも。毎日のように「早く居なくなってくれないかな」とか考えてるとだんだん苦しくなって、ああダメだ、目が潤んでぼやけてきた。早く寝てしまえば思考が止まるのに、気づいたら1時を回っている。明日の朝苦しむのもわかってる。だけど嫌な思いが頭の中をぐるんぐるんしていて眠れそうにないや。頭の中に住み着いている誰かがいじめてくる。一度だけそいつの声を聞いた。でもその言葉はあんたの口から出ていた。
不思議なことも起こるもんなんだな。
あんたは体があまり強くない。乗り物酔いはしないほうが珍しい。小1のとき水ぼうそうにかかり、兄妹にうつしてしまった。小学校の間だけで3~4回インフルになった。中2の9月頃リレーのバトンパス練習してたら目の前が真っ暗になって座り込んだ。そのあと軽く痙攣したし意識が半分くらいどっか逝ってた。それ以来しょっちゅう貧血を起こすようになった。お陰で保健室の先生に顔と名前を覚えられた。生理じゃないのに貧血だなんてね。水飲め。鉄分採れ。そして寝ろ。
あれ、これって心配してる?あんたなんかのことを?あたしはほんとにあんたが嫌いなのか?こうやって時々わかんなくなるから余計にしんどい。嫌いなのに無意識にあんたのこと守ろうとしてる。あんたのこと褒めようとしてる。当たり前だけど、あんたのことを常に守ってやれるのはあたしだけなの。あたしがしっかりしないと、あんたは本当に死んじゃいそうに見えるよ。死ぬなよ。逃げるなよ。お空の上から迎えがくるまで。
あんたは周りに迷惑かけてばっかり。受験生のくせにこの冬休みの間、多い日で5時間くらいしか勉強してない。受験の色々な予定も頭に入ってないから親に心配かけてイライラさせる。兄とは違って手のかかる子供だ。妹や弟はこうなっちゃだめだよ。
人のこともたくさん傷つけてきたよね。前から不登校だったけどあんたが見捨てたせいでもっと学校に来にくくなった友達。今あんたの代わりにその子の負担を負わされている友達。あんたが仲良くしすぎたせいで結ばれなかった先輩と友達。好きな人が被って上手くいったもののあんたのせいで素直に恋愛を楽しめなくなった後輩。他にもたくさんいるけど書ききれないや。みんな、あんたのせいで不幸になったんだよ。あんたさえ居なけりゃみんなもう少し幸せに生きてただろうに。生まれてこなきゃよかった。精子と卵が出会ったときから間違ってた。
本当は、あんたのことを愛したい。自分に自信がない性格を変えたい。でもあたしにはやり方がわからないよ。だからあんたのことまで傷つけてしまう。ほんとに最低。自分で自分を愛することもできない無力な人間。だからあんたはいつまでも孤独なのさ。
ほんとはね、愛したいの。愛されたいの。あたしには将来言ってみたい言葉がある。それは「あなたのことを絶対に幸せにします」という台詞。女の子が言ってもいいよね。理想は告白のときにでも言いたいけれど、幸せにできる自信がない。彼の何気ない言葉に救われてきた身だから、今度はあんたが救う番だよ。できるかな?人のことを愛しているうちに、きっと自分のことも愛せるようになれるよね。
それまでたくさん時間がかかるだろう。でも、あんたのこと好きになりたい。あたしなりに少しずつ頑張るからあんまり責めないでね。
敬具
2023年1月7日(土)
この世で一番嫌いなあたしへ