今日の天気は雨のようだけど、○○君、ひょっとして君の涙かな?
もっと生きたかった君の無念の気持ちかな?
君と出会った時のことを今でも覚えているよ。
君は年上の俺に対してとても懐いてくれたね。
今思うと、君の家には問題があったのかもしれない。
それが証拠に、遊んだ時にとても嬉しそうに笑っていた。
懐いてくれる年下の男の子の存在がとても愛しく思えた。
今思えば君は自分の居場所を探していたんだろう。
野球部に入ったのは、勉強の出来ない自分がどうすれば人に認めてもらえるかを実現するための手段だったのかもしれないね。
君の顔は中学生にしてはとてもかっこよかった。普通に大人になっていたら、みんなが羨むくらいの男性になっていたと思う。
でも君はいつも寂しそうな目をしていた。
俺が無神経にも、亡くなった君のお母さんのことを聞いてしまった時の君の本当に寂しそうな目が忘れられない。
そして、あれは俺が親戚の家から実家に帰る日だった。
その日は昼の電車で実家に帰る予定だった。
君は朝に親戚の家に来て、俺と一緒にゲームをしていたね。
そんな君の横顔をみて、俺はたまらなく君を愛しく思った。
そして...
俺は一線を踏み越えてしまった。
あの時の君の気持ちはどういうものだっただろうか。
きっと俺に対して、想像を絶するような嫌悪感を抱いたに違いない。
多感な中学生の時期、家に帰って、体が壊れる位吐いたと思う。
君の心をズタズタにしたのは、他でもないこの俺だ。
後になって、親戚の卒業アルバムを見て、精悍なスポーツマンという君のイメージからのあまりの変わりようにとても驚いた。
アルバムを初めて見た時にはこう思っていた。
野球をやっていた君の方がかっこよかったのになって。
今思えばこれほど無責任で能天気な発言はないだろう。
さらに時は過ぎ、俺が20代半ばの時。
君が肺癌で死んだと親戚から知らされた。
最初聞いたときは、えっ?と思った。
あんなに元気だった君が?って思った。
ごめんな。ごめんな。中学生の時、高校の時、俺があんなことをしなければ。
俺がまともな家に生まれていれば。
君は命を落とすことはなかったのに。
君は俺と同じようにとっても寂しかったんだろ?
どこにも居場所がないと絶望していたんだろ?
俺と同じように普通になりたいと誰よりも願っていたんだろ?
君が嫌いだったのは人の醜い心だったのだろ?
今日の天気はそのような君の心の中の見えない血が雨になっているのかもしれない。
だが、俺もそう永くはなさそうだ。
俺は行き着くところまで行き着いた。
普通の幸せとは無縁の生活だった。
治る見込みのない重度の精神病にかかり、普通の友情を育むことが困難になり、恋愛など夢のまた夢。待っていたのは仲間外れの論理のもと、排除されるだけの日々。
何一つ上手くいかなかった生き地獄という苦行。
だか、それも当然のことだろう。
君に手をかけたのは俺なのだから。
君にお願いがあるんだ。
俺が死んで、彼の世へ行くときに俺を連れていってくれないか。
あの時見せた寂しそうな目のままでいい、アルバムに載っている何かを憎んでいるかのような目でももちろんかまわない。
俺を連れていってくれないか。
その時に言いたいことを好きなだけ言えばいい。俺に対して好きなだけやり返せばいい。
どんなことをされても俺は一切抵抗はしない。
君の気がそれで晴れるなら、晴れるまで俺にやり返せばいい。
ただ、一つ約束しようよ。
終わった後は、お互いに笑って仲直り。
仲直りした後は君とキャッチボールがしたいな。
そして、お互いに笑って彼女を紹介できたらいいなあ。いい家族を築けるといいなあ。
ただ、それにはもう少し時間がかかりそう。
決して長い時間ではないから待っていてね。