私の憧れであり傷である君に最高の感謝を込めて手紙を。
いよいよ文章にしてしまうみたいだ。
辛いし、思い出したくもないし、でも忘れられない、けれど絶対に私を形作ってくれた出来事。
私は、現在進行形でとあるアニメが大好きだ。
日本人なら誰でも知っていると思う。派手なジャケットを着た大泥棒たちのお話だ。
私の学校では、そのアニメの主題歌を鼓笛隊で演奏する文化が何年も続いていた。
楽器もたくさんあったし、毎年「あの学校の鼓笛が今年も楽しみだ」と話題になるくらいには立派なものだった。
ただ、一つ条件があった。
オーディションに受からなければいけないのだ。今年受けたのは50人。受かったのは20人ほど。私は奇跡的に受かった。
毎年毎年落ちてきて、最後のチャンスだったから挑戦したら受かった。しかも、大好きな作品の主題歌。
もう嬉しくて嬉しくてたまらなかった。誰かに一生分のありがとうを伝えたい気分だった。でも。
2020年2月、全国一斉休校。
鼓笛はもちろん、ほぼ全ての行事は中止。
死んでしまおうかと思った。私が彼を裏切ったのか、彼が私を裏切ったのか。
誰のせいでもないのに、そうやって誰かのせいにしようとしていた。
父親と母親には、正直ほとんど理解はしてもらえなかった。
「コロナ渦の中悲劇のヒロインを気取っている馬鹿な娘」だと思われていただろう。
パニックだったし、冷めていたし、自分にも彼にも失望していた。
そんな時だった。
そのアニメの新作を観たのだ。少し前に発表された、初の3DCG作品。
私はこれを観て二回泣いてしまった。
まずオープニング。圧倒的な格好良さだった。私はこれを演奏して発表する機会を失ったのか、たった数ヶ月前までその権利を持っていたのかと思うと涙がぼろぼろ出た。大好きなはずなのに、何故かとても目を背けたくなった。
そして、二回目はエンディングだった。
この時の涙は、本当に、たくさんの感情が入り乱れていたと思う。
私をそんなふうにさせたのは、この作品のエンディングテーマ。
ここに歌詞を載せてしまうとあまりよろしくないと思うのだがどうか載せさせてほしい。
“ありがとう、いつか 風にのって、私の声が 届けばいい”
まず驚いた。その驚きからさめないうちに涙が出た。
彼と繋がった気がした。これは、私が本当に彼に言いたかった言葉なんじゃないかと思った。
あの時は本当に何と言ったらいいのか分からなかったが、今文章にするならこうだろう。
これまで、そしてこれから私が生きていく中で彼らと出会えたということの嬉しさ。
あの時から今まで、何回も死のうと思った私が今ここで生きていることの奇跡。
それでも、確かに残る寂しさや虚しさや苦しさ。
それから、私がどうなったか。
今は、絵を描いている。彼らを描く練習をしている。
頻度はゆっくりだし、まだまだ勉強中だ。
でも、私はやっとあの歌の言葉を彼に言えるようになった、と思う。
大泥棒な君へ。
見てるかな?
今も土曜日授業入っちゃって病んだり胃痛めたりそれで痩せちゃったりとかまあ色々あるけど元気にやってるよ!
毎日あの時のこと思い出してはちょっと寂しくなる日々です。
でも、いつかまた君に会えたらいいなって思うよ。
風にのって、私の声が届けばいいな。
それまで待っててね!
私の憧れであり傷である君に最高の感謝を込めて。