夜が深い頃にこの手紙を書いている。
ふと思い立ったからだ。
手紙を誰かに今まで書いたことはあっただろうか。友人に向けて片手で数えるくらいにしか何か自分の言葉を綴ったことはない。
初めてだ。名前も知らない、宛先の知らない誰かに手紙を書くのは。
なにかこう、伝えたいことがあるわけじゃないし、届いてほしい思いもない。書いてるなかで何を言っているのか分からなくなると思う。それでも。
それでも、書きたいと思ったことは本当だ。ずっとなにかを書きたかった。書くことで不満を解消できることを求めているんじゃない。と思う。
心の奥底で自分の心を出したかった気持ちがあったんだと思う。
僕には、本当になりたいものがない。
昔から本当になりたいものなんて無かった。
みんなが思い描いている将来像。将来こんな職業に就きたい、こんな風に生きていきたい、とか。
時々、なりたいものはあった。でもそれはその瞬間に思っただけで、大それた理由なんて無かったんだ。
自分の根幹というべき、いや、信念を抱えて生きてこなかった。
自分の心の内に何もないから、すぐに自分を見失う。何のために、どうしてこんなことをしているのか、分からなくなる。
生きる意味。この時間を使っている意味。それを簡単になくす自分。
僕は何にもなれないのだろうか。なにになりたかったんだろう。
わかってるんだ。全部、全部わかってる。僕は、自分に誇れる自分になりたかった。