やっぱり殺すしかない、殺せるだけ殺して自殺する、それが正しい人生だ。俺は殺される。なら、死ぬ前に一矢報いたい。子供の頃から

俺は殺される。
なら、死ぬ前に一矢報いたい。

子供の頃から、ろくでもない人生だった。

家庭内暴力は絶えず、毎日怯えながら育った。
性的に欲求不満だった父は、俺を陰間にした。
恨みを募らせた母は、脳梗塞で喋れなくなった父の母を、見えないところで打った。
誰かが死ぬ一歩手前までいった暴力の果てに離婚が成立した。

その後はひたすら貧乏だった。
それでもこの境遇から抜け出そうと、自分なりには努力した。
この国では一流大学と呼ばれるところに給付型の奨学金をもらって通った。
その後も、勉強、勉強だった。
社会に出てからも、必至に働いた。
それこそ、体を壊すほどに。

気付けば、何も残っていなかった。

家族の数百万の借金を肩代わりさせられ。
離婚した片親の世話は俺が一人でみている。
俺は友人を裏切ったことはなかったが、友人と思っていた連中はみんな俺を裏切った。
勤め先の会社も潰れた。
その後は請負の仕事だ。
法律の外で、一番苦しい仕事をするしかなかった。

そして妻も子供もいない。
一応、相手を探す努力はしたし、付き合ってくれる人は大切にしてきたつもりだ。
だが、それがいけなかった。
どうも女というものには、自分自身以外を愛するというロジックがないらしい。
男という鏡が自分を輝かせてくれる間だけ、笑顔を見せる生き物なのだ。
これでは誰を捕まえても悲劇にしかならないし、生まれてきた子供も、男なら苦しむだけ、女なら怪物のコピーになるだけだ。

かつては、誰かを愛し、愛される人生を送りたいとも思っていた。
だが、それこそが不幸の根源だった。
与えれば付け込まれる。
与えなければ鞭打たれる。
この世界は敵だった。

そうして俺は、何も残せず、奪われるだけで死んでいく。
だから、俺はゆっくりと殺されているといえる。

自業自得だって？
ああ、それでいい。

俺は一人だった。
これからも一人だ。
俺は人間じゃなかった。
人間じゃないと認定された。
人間達に。
家族に。
職場に。
女達に。
この世界に。

やられる奴が悪い。
その通りだ。

だから。
俺がやっても、やっぱりやられる奴が悪い。

殺したい。
恨んでいる奴も殺したいが、それだけでは足りない。
何の罪もない子供を一方的に殺したい。
そこまでやってこそ、俺は人間と対等になれる。

迂闊なことをすれば、お前は死ぬぞ、だって？
そうだろうな。
だが、惜しいものなどない。
今すぐ手を染めないのは、数を稼ぎたいからだ。
十人、二十人を血祭りにあげたところで、誰も絶望しない。

俺はこの世界を滅ぼしたい。
そして幸いにも、ごく僅かにだが、その可能性があると知った。
ただの個人でも、人類を根こそぎにするチャンスがあるのだと。

まぁ、それができないとなったら……
残念だが、普通の方法で可能な限りの人数を道連れにするだろうがな。

最期に一矢報いてやる。
せめて怯えろ。

この世界は俺を許さなかった。
俺もこの世界を許さない。