バタバタとパトカーから降りてきた三人のお巡りさん。その一人が僕の正面に立ちここで何をしてるのかと聞いてくる。職務質問になってしまった。
僕は「特に何も」と応えるけれど。
お巡りさんは職務質問を続ける。
「どこから来たか?」
「どこに行くのか?」
「何をしてるのか?」
僕は
「何も悪いことはしていないから、答える必要はない」と応える。
しかし、お巡りさんはさらに続けて、
「リュックの中身を見せて欲しい」
お巡りさんは僕の背負っているリュックの中身を確認したいと言う。
僕は何も法律に触れるようなことはしていない。
「悪いことはしていない。ただ歩いていただけだから答える義務はない。任意ですよね?」
と応えると、お巡りさんは
「任意だからお願いしている」
と返してくる。
面倒なことになった。
正面に立つリーダーらしきお巡りさん。身長は僕と同じ位で物腰は柔らかく威圧感はないけれど、引き下がる気配がない。僕は、
「任意だから拒否している」
と応えるけれど、お巡りさんは、
「任意だからお願いしている」
と返してくる。堂々めぐりだ。
僕の正面のお巡りさんは、態度はとても丁寧だけれど、絶対に引かないという強い意思を感じる。
「任意だから拒否している」
「任意だからお願いしている」
延々とこの繰り返し。
三人のお巡りさんに囲まれて、進むことも戻ることも出来ない。事実上の強制だ。
恐らくこの押し問答は30分は続いただろうか。お巡りさんも少し焦れてきたのか、「ここは自殺の多いところだから」と本質を突くようなことを言い始めた。そして「身分証明書を見たい」と言った。
自殺の多いところ?
ここは富士山の樹海。
なるほど、事実そうなのか。
今度は
「身分証明書を見たい」
「見せたくない」
の繰り返しになった。
何度かのこの押し問答のあと、お巡りさんも焦れてきたようで、
「身分証明書を見て、捜索願いが出てないことが確認できればいい」と言った。
捜索願い?そう。つまりお巡りさんは僕が家出して自殺を謀っていると見ていることがはっきりした。
僕に捜索願いが出ているだろうか?
僕の家族は捜索願いを出しているだろうか?
わからない。
任意ではあるけれど、このお巡りさんは「お願い」と言う「強制」でもって、僕を解放しないだろう。
免許証を見せることにはなるけれど、捜索願いが出ていなければ、この執拗な職務質問から解放される。
僕も歩き詰めで足がクタクタで、根負けしそうだった。
僕の家族は捜索願いを出しているだろうか?
僕は家に残してきた切り刻んだ殴り書きを思い出していた。かなりゾッとすることを殴り書きして家に残してきたような気がする。
それでも、
捜索願いは出てはいないはずだ。
これまでの家族とのことを思い出して、僕はそう思った。
お巡りさんと僕の交渉は成立した。
(今回はここまで。まだまだ続くよ)
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