私は、生まれつきの障害と、中途発症の精神障害の違いを感じ取ります。
自閉症と聞いて、正確にこういう障害だと言える人がどのぐらい、いるでしょうか?
映画で何回か取り上げられ、名優が熱演しているので、その印象がある人もいれば、漢字から受けるもので想像する人もいます。
でもそれは自閉症という障害の一部です。今ならあまりひどくなくても3歳ぐらいで気づけますが、少し前なら、ひどくないなら小学校低学年まで気づけないものでした。
認知度が低いです。生まれつきのものですけど、体に問題がないので、普通の健康診断では気にされてませんでした。認知度が上がり、健康診断で平均的な赤ちゃんの発達過程と比較するようになりました。
母親にとっては、それがわが子の持つもので自閉症を知ります。他の自閉症を知りません。
先に書いたのはひどくないものです。程度がひどくなると生まれてすぐに気づくこともあります。先のお母さんにとっては、わが子のその状態でも悲観するでしょう。でも、もっと嘆いている親もいるんです。
私のいる場所は、精神的な問題がある人の多くいるところで、生まれつきの障害がある人は多くは知りません。でも両方見るので、違いを感じ取ります。
口にするのも、こうして言葉で表現するのも憚らなければならないことでしょうか?私はそう思わないんです。
生まれつきの障害は、最初は親の悩みになります。当の子供はまだわかっていません。障害によって、他人から発されるものをどの程度わかるかにもよります。
知的障害でも、人からばかにされたらわかる小学生もいますし、わからないまま中学生でわかるようになることもあります。
生まれつきの障害の子供に兄弟姉妹がいると、きょうだい児になります。盛んに心のケアの必要性を言われています。
私はこのきょうだい児のメンタル状態をいくらか見ることになりました。
精神障害は、思春期以降に発症するので、兄弟姉妹もそれなりに成長した時のことです。
ほとんど生まれつきの障害の子と同じぐらいに生まれた健常児なのに、なにか違うものを持っています。
人から見た時に、現実的ではない考え方をしている、と言い表せるかと思います。
そうなった背景は十分わかるんです。精神障害だって、背景があって発症します。
兄弟姉妹の問題がなくても、似たような思考を持つ人もいますので、おかしいと周囲は気づきません。違和感を感じても、この人はそういう考え方をするんだ、そういうところを大事にするんだな、あまりいないタイプだな、その程度です。
人に大きく違和感を感じさせる人もいました。私が初めて関わったきょうだい児の方です。
本当は、精神障害のある家庭との違いを書こうとしていましたが、書いているうちに夢中になったので、きょうだい児の悲劇と負の連鎖はここにもあると言いたいです。
今でこそ、物理的な距離、経済的なものを言われていますが、その人はもう手遅れな年齢です。人生のほとんどを弟さんに、ご両親に奪われていました。
弟さんのことで両親が喧嘩をする。
本人だって、小さくて、本当のところ、両親がなぜ喧嘩になるのかわかってなくても、喧嘩する親は子供に不安を与え続けます。
自分がいなかったら、母親はどうなるんだろう。共依存のような関係になり、友達よりなにより母親のそばにいたがります。母親のためと言っても、自分のためなんです。母親が無事で家にいてくれると安心したいから。
その人のことを思うと切なくなります。
人との関係の作り方が上手でもなく、家と外を上手に区別するすべも持っていませんでした。弟のことを言うべきか、言って理解を求められるか。人と出会うたび、まずはそれから始まるようでした。
たとえばそういう背景がなければ、親しくなるために、相手の別の友達がしているようなことをします。どこかに誘う、共通する話題を探す、など。
もしかしたら彼女なりにやっていたのかもしれませんが、私の目には、自分の都合のよく何かしてくれる人を探しているように見えました。
そして、その気持ちも少しはあったと思います。
私がその都合よく使われる立場でした。彼女のが年上で、できるだけのことはと思っても、毎週土日は家のことで、私も仕事も気にしません。その間にも状況は変わっています。私は土日も仕事してましたし、そうしないといけない状況だからです。
私一人じゃなく、家庭があって優先すべきことのない人らは、同じく土日仕事してるんです。
家庭があって、土日仕事してない人は、土日に何があって、どういう風に状況が変わったかを確認します。そうして土日働いた私らにお礼やねぎらいを言います。
彼女は、私らが土日していることに気づくのも非常に遅かったです。状況が変わった理由も気づきません。状況が変わったと口で言わなければ、自分では気づかない。私が言う役目になっていました。一度もお礼もねぎらいもありません。
その分平日の夜、私らも早く帰れることがあって、仲間同士食事や飲みに行く話は必ず参加します。でも、私にばかり話しかけて、他の人と話さないんです。私はまだ若手で、その人らをまとめる力量は持っていません。そして、私は他の人とも会話したいんです。できるだけ、話を他の人にも振って、もっと親しくなってもらおうとしても、彼女のほうで、それ以上話さなくなるんです。
彼女から自閉症の弟さんがいると聞いたのは、会ってから半年ぐらいでした。あまり知識がなくて、何も言えなかったんですが、その後から、前述した、両親の喧嘩、弟さんの状態を彼女から話してきました。
レインマンみたいなのがそうだと言われ、密かにレンタルで見たんですが、あの映画ではサヴァン症候群の自閉症です。弟さんは、自閉症でも、サヴァン症候群ではありません。そういうところが多々あるのと…。
「弟は世界一ハンサムだ」
ハンサムという表現も、私にはしっくりしませんけど、それ以前に自分の弟が仮にイケメンでも、そんなふうに褒めて人に言わないでしょう。
「まあ、イケてるほうだと思うけど」というぐらい。
そこが大きな引っ掛かりでした。
ボツボツと語る中には、弟さんのことで結婚適齢期を逃した、小さい頃から父親が怒りに任せて、大きな音をたててドアを閉めるから、大きな音が苦手だった。
そんな話はする。
私は精神科医ではありませんし、その頃はまだメンタル問題の一部を知り始めたぐらいで、知識があまりありません。
それに患者さんとして会ったわけでもありません。彼女よりはちょっと年下で、私よりは上で、リーダー的な女性がいました。私はその人を慕っていました。
「どうしてあの人が言えばこうなるの」と言われて、言葉に困りました。
彼女が年下なら説明できますが、ずっと年上です。
そのリーダー的な女性は、土日も、平日夜も、私らと同じかもっと、いろんな配慮や努力をしてきて、実績が普通以上だからです。
彼女にすれば、自分のが年上なのに、という不満。それを後からもたくさん見せられました。
仕事内容に触れたくないので、あいまいになりますが、最初は年齢を考えてAクラスを任されていたのが、Bになり、Cになり…。
任せる方も、土日も仕事してくれる人じゃないと…になりますし、平日の仕事ぶりを見ても、先に書いたリーダー的な女性と比べても、私より若い人と比べても…というところなんです。土日必ず仕事をしないといけないんじゃないんです。熱意というか、何かあるなら私がやります、という気持ちがないんです。
仕事ですから、仕事時間いて、定時に帰ってもかまいません。そうして、彼女はほとんどそうする。たまに残ることがあると、みんなほとんどいるのを見て、どうしているのと尋ねても、誰もが、いや、することがあるから、です。そのぐらい仕事が詰まってるんです、本当は。
幼稚園の先生も遅くまで残って、次の日に使う教材や、お遊戯会の小物作りますよね。それと同じ。当日その場でぱっと出せないと困るから、土日や遅くまで働くことになります。
彼女がそうしないのは、家でやっているわけもなく、そういうのは仕事じゃないと割り切ってるんです。
そうして土日は家に。事情を知っていても、ちょっと理解できなかったんです。
だって、彼女が帰ろうが帰らなくても、弟さんはもういい年齢で、ご両親は両方とも健在で、何か助けがいるわけじゃないとも言う。
私らだって、仕事以外のものだってそれぞれ抱えつつやってるんです。土日ができないなら、遅くまで残るとか、その逆とか。
準備もしていないのに、当日その場しのぎの自分の口から出るものだけ。他の人なら、いろんなものを準備してるのに。
上司だってそれをわかるから、どんどん評価を下げました。
こうやって書くと、その人がいかに仕事に向き合っていなかったかを強調しているみたいですが、人から見ると、そう見えるんです。
でも彼女は仕事をしていても、気持ちが家にあったんだと後ではわかります。
気持ちがそこにないのに、そこを考えるわけがない。
ご両親はそんな娘をどう思っていたのか。はっきり言えないんですけど、その弟さんの今後を頼める、「都合のいい存在」
そんな気持ちはどちらにもなかったとしても、そういうことでしょう。
彼女が言えない分まで、言ってやる。
親で、娘の仕事を十分わかっているなら、家のことは気にせず、仕事に没頭しろ、そういうはず。どんな仕事してるんだ、どんな人らがいるのか、みんなとどう関わっているのか、少しも気にしてない。娘への心配なんてしてないから、そうなったんでしょ。
娘のほうも、親は弟のことでいっぱいだから、私も弟のことを大事にしなきゃいけない、他のことより何より優先しなきゃいけない、それで間違ってない。
そうなったんじゃない。
親は助かったでしょうね。給与も退職金もいいと言われる姉がいて、両親の介護も自閉症の息子の今後も見てくれて。
だけど、彼女の人生はどうなった?
話すと普通の返事が返る、それなりの常識や能力もある。
だけど、なにもかも親と自閉症の弟に奪われて、彼女が彼女として生きられる時間がどこにあったというの?
私は自閉症の家族がいないから、わかってないだけかもしれないけど、子供が2人いて、1人が障害があるからって、もう1人だって親が必要なんです。
なぜあんなになるまで、ほっとけたんですか?
自閉症の子を大人まで育てた、偉いとでも?
もう一人にどういう言葉がけしてきましたか?
今日学校であったこと、楽しかったこと、友達とのこと、そういうのちゃんと聞いてあげてました?
知らないところで泣かなくていいように、抱きしめてあげてましたか?
彼女が私より年下なら、もっと何かできたかもしれません。
いた場所も露骨に能力で、誰からもわかるような配置換えしたから、彼女はどんどん愚痴も言えない、人のあらさがしするばかりになっていきました。
もう退職しているはずです。弟さんとどうしてるから、ご両親は今も健在なのか、介護に苦労しているのか、まったく知りません。
でも、他の人が、自分のために生きているのに、なぜ彼女はできないの?
きょうだい児の問題とは、第一は親の問題です。
他人にはどうにもできないところで、それが起きた。虐待と同じなんです。
虐待ならバッシングするのに、きょうだい児なら親の苦労もわかる?
わかってないと思いますよ。
一番は子供たちそろって犠牲者です。
子供の頃の傷は、大人になっても癒えません。
障害を持つきょうだいを持ったから、親はその罪を許されるとは私は思っていません。でも親は先に死亡し、残った子供の悲劇を聞くことがない。
残った子供は家庭も持てずに、誰に面倒見てもらうの?
そこまで考えもしない、都合のいい親、都合のいい子供。この世にそれがあっていいのですか。
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