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(Cont'd) 友人のところへ行ってきた (#8)

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お茶を飲みながら、Cちゃんの悩み事に耳を傾けていた。
一通り話し終えたあとで少しの間が空いた。

「あのさ。ちょっと気になることがあったんだけど」
つとめて穏やかに切り出す。
「なぁに?」
「さっき急に向こうの部屋に行って、戻ってきたときの様子がいつもと違ったから。何かあったのかって心配で」
「……あったよ」
彼女はそう言ってうつむいた。

「最近、またヘンな夢ばっかり見てるの。何とかしたい、どうにかしたい。でも無理」
「それは、こわい夢?」
「わかんない。でも、夢のなかで大事な人がいなくなるの。いろんな理由で。夢だから現実じゃないよ。両親いなくなったのだって、直前に見たのが正夢になったわけじゃないし」
「そうなんだ。でも、お父さんお母さんを亡くしてからあんまりいい夢見ないって、前に言ってたね。そういう生活のほうが、もう長いんだもんね」
「うん。大人になるにつれていろんな波に引っぱられるようになって、それはもうしょうがないんだけど。ここまで来るのにいくつも限界ポイントがあって、心も身体もいちいちボロボロになって。まさか病院通いするほど悪くなるなんて思わなかったけど」
彼女の表情は乏しく、視線もほとんど動かない。それでも、慎重に言葉を選びながら話しているのが伝わってきた。

「これは、話しといたほうがいいのかな」
「うん。聞かせて」
「僕の現在位置くんも、何回かいなくなってるんだ。いろんなシチュエーションで。詳しくは言えないけど」

「入院中もヘンな夢たくさん見て、不安が最高潮だった。自由が効かない環境って怖いよね。身体は動かせないし、あること無いこと言われてサンドバッグ状態。ケガは治りつつあるかもしれないけど、蝕まれた心はなかなか思うように戻らない。そんな現実を生きてる間に、いつか本当にいなくなっちゃうんじゃないかって、いつもビクビクしてるんだよ」

教えてくれたらよかったのに、とは言えない。彼女の性格からして、自分を責めてしまうだろうから。あのときもっと話を聞けていればと反省した。

   ◇

静けさが部屋の空気を統べる。
考えた末、僕はテーブルの上に両手を出した。
「おひとつどうぞ」
しばらくして、彼女の手が指先に触れた。
「いや、ひとつと言わずいくらでも。減るもんじゃありません」

僕の指を一本ずつ、存在を確かめるように。
それは赤ちゃんが時折見せる把握反射にも似て、人の原始的な本能さえ感じさせた。
「僕はたしかにここにいる。いなくならないよ」

「落ち着いてきた?」
「うん」
「人肌ってふしぎだね」
「うん」
「僕の手、やっぱり白いよね」
「うん」

♪しあわせ / メロキュア

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