自転車の荷台から
タイタニックさながらの傾きで
地面へ下ろされたダンボール。
無造作に蓋を開けたおっさんが
小学校の正門付近を
天国に変えた。
ワンコインで購入した
私の天使は
眼光鋭いガテン系に
育った。
黄色いふっくらした羽は
この世の至福を
私に与えてくれたが、
育て方を間違ったのか
あるいは正しかったのか
愛くるしかった面影は
一片も残っていない。
私に向かって飛んできた日の
事を、私は忘れないだろう。
ほうきがプロテクターになると
生まれて初めて学んだよ。
手から、餌をついばむ
純粋無垢だったヒナ。
頬ずりしても、決して
見つめ返してはくれなかった
けれど、目線を外される
事には慣れてたよ。
大きくなって、私を見つける度
積極的に目を合わせてくれる
ようになった事。
誇らしかった。
あんなに早く走れるんだね。
翼を広げて駆け寄ってくれる
無邪気なヒナが
大好きだった。
広くて喜ぶだろうと
山奥の祖父母宅の庭へ
話した途端、
山向けて一直線に
野生化したね。
巣立ちの時なのかと
感じた小6の夏休み。
30年ほど前の思い出。