抜ける炭酸の泡のひとつひとつを惜しんだ。
給食の野菜だけをおかわりした。
米粒を指で丸めて遊んだ。
足の指の爪をふやかして自力で剥がした。
どうにも心が落ち着かないときに、自分を殴った。
嫌いな人から声をかけられ、その場で倒れ込んだ。
自分がダメなのを性格のせいにした。
泣くことが当たり前だと人に語った。
落ちているハンカチをどうしたら良いか分からず、職員室の前にこっそり置いた。
雪の日に外で友達と遊ばなかった。
人と違う自分を間違いだと諭した。
目が笑って、口が笑ってなかった。
口が笑って、目が笑ってなかった。
合わせても、目も口も笑ってなかった。
自分の声の低さに驚いた。
人に話しかけられるたびに「何?」と返した。
人の気持ちが分からないから、小説文を読まなかった。
頭が回らないから、説明文を読まなかった。
これら全てを直そうとしなかった。