ノマド「ねぇ、なんでラフは総統になったの?」
橙色の夕陽に照らされながら無言で歩いているとノマドがそう俺に問い掛けた。
『なんでなったか、、、難しいな』
ノマド「そんなに難しいの?」
『嗚呼、とっても』
ノマド「、、、そっか」
ノマドが少し寂しそうな表情を見せる。
『言えない訳じゃ無いんだ、、、なんて言えば良いか悩んでな』
ノマド「包み隠さずさ、真正面から俺に伝えてよ」
そう言うとノマドは俺の前に走り込み顔を此方へと向けた。
ノマド「ほら、どうぞ」
『そう、だな、、、、、、皆に、必要と、、、されたかったから、、、』
ノマド「必要と、、、」
『嗚呼、そうだ。必要とされたかった、、、悩んでいた父親に、、、苦しんでいた母親に必要とされたかった』
『俺は結局力不足だったらしくてな、二人からは必要とされなかった』
ノマドが哀しそうな表情を見せるから心配しなくて良いという意を持って笑って見せた。
ノマド「そんな事無い、、、」
『はは、其れがそんな事あるんだ。あるから俺は二人を救えなかった、、、救えた筈だったのに、、、救えた筈だったのになぁ、、、』
ノマド「、、、ラフがどんな思い抱えて生きてるか分からないけどさ、今ラフはきっと総統として国民に必要とされてるよ」
『国民から税を徴収してるだけなんだけどな』
ノマド「其れも上回る何かがラフにはあるんじゃない?」
『だと良いんだけどな』
ノマド「親に必要とされなかったラフの辛さは俺には分からないけど、俺は今、ラフの事を必要としてる」
必要と、必要とされている。
自然と顔が綻ぶ。
ノマド「だからさ、そんなに強がらないで、弱い所も見せてよ」
『、、、嗚呼。機会があればな』
必要としてくれているなら、、、其の期待に応えるまでだ。
父さん、俺は人に必要とされる位強くなった。
国民も、目の前の此奴も俺を必要としてくれた。
今俺が貴方の前に現れたら、貴方は俺を必要としてくれますか?
其れとも、また、俺から遠ざかってしまいますか?
俺に恐怖を植え付けた儘、また何処かへ消えてしまいますか?
俺の命ももう長く無いから、、、死ぬ前に一度だけ、貴方に必要とされたかった。
なんていう俺の望みは貴方にとったら贅沢な悩みで、邪魔な想いでしょうか。
ノマド「ラフどうしたの?早く帰ろ」
『嗚呼、すまないな、少しだけ考え事だ』
貴方の事を考える前に俺は、今一番近くて、遠くに居る彼奴等の事を考える事にします。