グングニル国の国境へと近付く。
頭を上げ、瞳の焦点を合わせる。
真っ直ぐ見つめた先に見えるのは___
ノマド「い、え、、、」
俺が元々”家族”と過ごしていたボロボロな家。
ファング「んお?いえ?嗚呼、家か、、、そういえばノマドの家はここら辺だったな。寄ってくか?」
ノマド「いや、、、良いよ、、、どうせ何も無いし、、、」
ペル「いやいや、そんな事言うなって!ちょっと位覗いてこう!俺もちょっと休憩!」
そう言ってペル先生が早く家に行くよう促す。
ペル「外で待ってるから見て来て良いよ」
ファング「ん、そうだな、待っとく」
ノマド「ファング達は来ないの?」
ファング「何が起こるか分からないからな、俺等は外で見張っとく」
そう言うとファングはドカッと地面に座り込む。
ペル先生もA国の兵を雑に落とすとファングの横に座る。
ノマド「そっか、、、じゃあちょっとだけ見てくる。直ぐ帰って来るから」
そう言って入口の方へ足を向ける。
ドアノブを掴み自分側へドアを引く。
ギ、ギギギィと耳障りな音が頭に伝わる。
ノマド「埃だらけ、、、」
もう何年も人が住んでいない事を物語らせる家の汚さ。
天井には蜘蛛の巣が張り付き、床には物や虫の死骸、埃が落ちている。
部屋の奥に目線を向ける。
ノマド「、、、、、、」
骨が無造作に床に転がっている。
外から運ばれて置かれたのか。
どの骨も人の骨だ。
頭蓋骨は二つ。何処の骨かも分からない骨が其の周辺に転がっている。
もう、両親はいないのか。
もう四年も前の話。
白骨化していても可笑しくは無い。
俺はどれだけ無情な人間になったのだろうか。
親が骨になっているのに涙も出ない。
骨に近付く。
骨の近くに何か置いてある事に気付いた。
ノマド「何だ?写真立て?」
写真立てが裏を向いて此方を向いている。
自然と手が伸びる。
写真立ての表面を此方に向ける。
ノマド「、、、っ」
三人の人間が並んで此方側に笑顔を向けている。
母さんと父さんと俺だ。
俺も父さんも母さんも笑顔でいた最初で最後の家族写真だ。
あの時は幸せだったな、とか考えて目頭が熱くなってくる。
嗚呼、此処に居ては駄目だ。
心を殺せ。
俺は無情な人間だ。
俺は軍兵だ。
こんな事で泣いてたら人も殺せない。
俺は其の写真立てから写真を抜き取るとクシャクシャに丸めて、其の儘地面に放り投げた。
もう思い出さなくても済む様に。
だけど手放すのは凄く惜しくて。
投げ捨てた写真を拾って、広げて畳み直して軍服のポケットの中に入れた。