これはある国のお話。
そこにはたくさんの人々がいました。
幸せそうに笑って過ごしていたのです。
とても平和で善良な国でした。
しかし、ひとつだけ、この国には不思議なルールがありました。
人々は自分の性別に応じて旗を掲げなければならないのです。
旗といっても生まれつきあるような体の一部のようなそれは男性なら青、女性なら赤というふうになっていました。
でも、例外はいました。
ある国のあるところに子どもはいました。
その子どものみんな持っているそれは真っ白でした。
家族からは気味悪がられ、怖い顔で隠せ、隠せと言われてきました。
そして家族たちは赤いペンキを持ってこういうのです。
『色がないなんてありえないわ。さぁ染めましょう?』
赤く染めれば家族たちは愛してくれました。
誰にも気味悪がられることもいじめられることもありませんでした。
しばらくすれば家族たちは自分の旗が白かったことも忘れました。
だから雨が降るたびに落ちるペンキをまた塗りたくって、塗りたくって、塗りたくって、塗りたくって隠していました。
また嫌われるのが怖いから、違うって思われたくないから。
隠していたのです。
子どもは思いました。
あぁ自分は赤と青の色相環の中にも入れないのか、と。
子どもは溢れそうな涙を溢さぬようにまた、旗を赤く染めなおします。
俯いたまま、必死になって。
誰にも言えない違和感を抱えながら。
いつしかそれは当たり前になって大人に子どもはなっていました。
そして、ある日気づいたのです。
赤にも、青にも、むらさきにも、あかむらさきにも、あおむらさきにも白がいるのだと。
ある子どもだった大人は泣きました。
そして、あの日に染めた赤を涙で流して誇らしげに白い旗を掲げて笑いました。
あの日涙を溢さぬようにこらえた子どもが救われるように。
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綺麗で分かりやすい文で読みやすかったです。子供が旗を染め直す描写もとても素敵でした。
違っていたら申し訳ないんですが、もしかして社会風刺でしょうか?この子供の境遇に共感できました。
素敵な小説ありがとうございました。
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