ここはまっ白な砂浜
たくさんの小瓶が転がっている
ちらほらとひとかげが
現れては消えて
消えては現れて
今日も沢山の人が
入れ替わり立ち替わり
やってくる
目に留めた小瓶を
拾い上げたボクは
中に入ったものをじっくりと見た
それは
拙い文面のちいさな手紙
ちっぽけだけど
必死で
一生懸命で
ただただ自分の気持ちを
ぶつけて
小瓶に閉じ込めた
そんなお手紙だった
決して明るくはなくて
「死にたい」
「消えてしまいたい」
暗い言葉も沢山あった
だけどひどく心を動かされた
とても共感出来たから
ボクはお返事を書くことにした
この手紙と同じくらい拙い文章で
「すごく分かるよ。一緒だね。」
気まぐれで流した小瓶を
拾ってくれた人がいた
いじけたワタシの
もやもやの気持ちをぶつけた
薄汚い小さな手紙
小瓶の中にお返事が入っていた
ワタシの手紙と同じくらい拙い文章で
分かるよって
一緒だねって
書いてあった
それだけで
それだけなのに
心が熱せられたようにあつくなって
ぎゅっと何かに胸を抱きしめられたような
そんな気持ちになった
ワタシって随分と
単純なんだよね
誰かが悩んでる時、
どんな声をかけたらいいのか。
何がダメで何が正解なのか。
私には分からない。
人によって捉え方が違うし、
自分のことも分からない私の発言なんて
誰かの為になれるのだろうか。
ここは悩みを抱える人達が集まる場所。
同じ悩みを抱える誰かや、
自分の気持ちに寄り添ってくれる誰かを、
求める人達が集まる場所。
なにもアドバイスしたり、
提案したりするお返事だけが
誰かのためになるなんてことなくて。
分かるとか、一緒だねとか、
つらかったねとか、がんばったねとか、
そんな言葉でも
悩みをかかえる人々の心には
ひびくんだよ。
少なくとも私には。
「すごく分かるよ。一緒だね。
ボクも死にたくて、辛いことばかり。
だけどボクはもう少し生きてみようと思った。」
………ワタシも。