血はおそらく戦争がなくても非常に多く流されるのだ。特に戦争は、最小の流血と、苦痛と、損害をもって国民の平和を獲得し、国民間の健全な関係を定める行為だと信じればいい。これは悲しい事であるが、そうだからと言って、ではどうしたらいい?無期限に苦しむより、いっそ剣を抜いてしまった方がいいのである。文明国民間の現代の平和が戦争より何処がいいと言うだろうか。人間をケモノにし残酷にするのは、戦争ではなくむしろ平和だ。長い平和だ。長い平和は常に残酷と卑怯、飽くことを知らない利己主義を生む。知識の停滞も甚だしい。長い平和が肥やすのは投機師だけである。
ドストエフスキー