元恋敵に懐かれてしまった。いや、私が勝手に敵視していただけなんだけどさ。
好きな先輩がいた。同じ部活のふたつ上の先輩。私は女子校に通っているから、好きとか憧れとか言う感情を感じることができるのは先輩くらいしかいなかった。先輩は部活の中で1番可愛くて、頭の回転が早くて、親切だから、うっかり好きになってしまった。
それが中1の冬。でも、同じ先輩のことを秋から好きだと言っていた同期がいた。その子は先輩と何回かお出かけもしていたしLINE交換もしていたし細かい変化にも気づいてもらえてて1番可愛がられていたのは誰の目から見ても明らかだった。
言うタイミングを逃した私は黙って先輩を見ていることしかできなかったから、せめて実力で先輩に少しでも近づこうとした。舞台系の部活だから、先輩の演出がある舞台は全て出た。先輩の最後の舞台では中3ながらキーパーソンとなる役を頂いた。先輩には「〇〇さんじゃないとあり得ない。」とか「〇〇さんは演技が上手だし人気者だね。」とか「〇〇さんの選曲のセンスがいい。」とか「母も〇〇さんの役がすごく良かったって言ってました。」とか沢山褒めてくれた。
同級生に先輩のことが好きだとバラされた後も、ツーショットを頼めば快諾してくれたし、さりげなく肩を引き寄せてくれたし、引退式で先輩方のことが大好きだと伝えた私に真っ先に「私も大好きだよ。」と言ってくれた。
それでも、やっぱりライバルちゃんの方が可愛いし仕事が早いし完璧だった。なによりもライバルちゃんが先輩のことを好きなのを知りながらあっけなく同級生に同じ先輩のことが好きだと言うことをバラされたのが情けなくて、申し訳なかった。
先輩が引退すると、私たちの代も段々とトップに近づく。私たちの代が卒業を見送るのがちょうど先輩の代。だから私は、今度は私の作る舞台で先輩を見送りたい、と強く願い演出助手の座に着いた。
しかしその数日後、ライバルちゃんがいない場所でふとライバルちゃんの親友にこんなことを言われた。
「そういえば〇〇って演出やりたがってたんだよね。」
知らなかったし、なぜ今行ったと腹が立った。ライバルちゃんは演出助手の私とは反対に、舞台監督助手を務めていた。しかも、演出になりたかった理由は私と全く同じらしい。
〇〇を泣かせないでね、と言われて泣きたいのはこっちだと唇を噛み締めた。せめてもの恩返しに演出助手に立候補したのは私だ。そんなにやりたかったのなら立候補すれば良かったのだ。どうせ私が落ちるのだけれど。
でも、本人から聞いたわけでもないので、すこし挙動不審になりながらもライバルちゃんには普通に接するように努力した。演出助手と舞台監督助手ではそれなりに一緒に過ごす時間もあった。その中で、あろうことかライバルちゃんは私に少しずつ懐いて行った。
私は性格上懐かれやすいたちだ。反応がいじりやすく、話しかけやすいのだ。それに何があっても冷たい態度は取らないよう心がけているのであまり離れて行く人はいない。ライバルちゃんもそんな1人だったのだ。ライバルちゃんは部活の同期の中でも一部の人にしかなついていなかったので、よりによってなぜ私が、という思いが強かった。
それでもやっぱりいい子だ。それは関われば関わるほどよくわかった。仕事ができる。頼り甲斐がある。信頼できる。優しい。可愛い。
いい子、なんだよ。
心を開いてくれる。私と何人かだけに。
それでも私は心からは好きになれない。それがとても申し訳ない。元々自分が悪いのに。こちらに選ぶ権利などないのに。だから、いつも顔を見るたびに、話すたびに、先輩のことを思うたびに思う。ごめんなさい。本当にごめんなさい。
誰でも無料でお返事をすることが出来ます。
お返事がもらえると小瓶主さんはすごくうれしいと思います
▶ お返事の注意事項
ななしさん
同じ人を好きになるライバルってさ、実は究極に趣味や好みが合う人なんだよね。
だから、先輩が卒業していなくなったら、もっと自然とライバルちゃんと仲良くなっちゃうと思うよ。
昨日の敵は今日の友。
あなたの心も時間とともに、変わると思う。
それから、あなたは別にライバルちゃんをいじめてる訳じゃないし、好きな気持ちを正直に色々行動してるだけだから、ライバルちゃんに変な罪悪感とか抱かなくていいよ。
好きだった人を嫌いになったり、嫌いだった人を好きになったり。人間って色々だから。
まあ、あまり深く考えすぎず、
あなたの心のおもむくままに。
誰でも無料でお返事をすることが出来ます。
お返事がもらえると小瓶主さんはすごくうれしいと思います
▶ お返事の注意事項