僕には兄が2人いる。
2人とも優秀で、優しくて、面白くて、弟思いな素晴らしい兄。
その兄2人の他に、性別も分からないまま亡くなってしまった子がいる。僕にとっては兄だったかもしれないし姉だったかもしれない。
もし生まれ落ちていたらどんな人に育っていただろう。少なくとも僕よりはうんと優秀で、親思いの、兄2人にも劣らない素晴らしい人になっていただろう。
その子が亡くなって数年後生まれたのが僕。
僕が生まれてすぐに父が亡くなった。母は突然男3人を抱えるシングルマザーになった。それでも懸命に兄2人を立派に育て上げて社会へ送り出した。
そんな家庭に生まれてたくさん愛情をもらっておきながら受験には失敗し、性格は人間の最底辺の出来損ないになったのが僕。
なぜ僕が選ばれてしまったんだろう。
なぜ僕に人生を与えてしまったんだろう。
馬鹿げた選択だ。実に愚かだ。
親を悲しませ、兄2人の人生を邪魔し、社会にもなんら貢献できない穀潰しの屑には人生を与えておいて、素晴らしい人に育ったはずの兄か姉からは産まれる前に命を奪う。
全く意味がわからない。
お願いだ。今ならまだ間に合う。20代前半の図体だけはデカくなったこの身体を差し出すからどうにか魂だけ取り替えてくれ。
僕の兄か姉がこの世界で生きた方が家族にも社会にもプラスになるんだ。頼むから。
不思議なことが起こる世界だ。｢事実は小説よりも奇なり｣なんだろう？死神くらいいるだろう。
頼むよ。もうこれ以上母や兄2人の邪魔をしたくないんだよ。もう僕の魂では何も変えられないんだよ。根が腐ってるんだから。屑はどう足掻いても屑なんだから。
この小瓶をが黄泉の国まで届くことを祈る。
