お話を書きたくなったので。
またもや抽象的な心理描写と掴み所のない話ですが、読んでいただけるのなら幸いです。
お目汚し失礼します。
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冷たい風が吹いて、カーテンをふわりと揺らす。
肌に触れる夜の痛みが心地よかった。
音もなく降り積もる雪が指先に乗り、じんわりと溶けていった。
窓から身を乗り出して、夜の街に触れる。
檻から出る勇気もない私のささやかな抵抗。
ほんの少しだけ勇気を出すだけで、今すぐ飛び出せるのに。
与えられる現状に満足しないくせに、ただ惰性で変わらぬ今を生き長らえている。
すぐに逃げ出せる檻は鳥籠なんて形容できない。
辺りは静まり返っている。
もしかしたら世界が止まっているのかもしれない、なんてありもしない妄想を繰り返す。
ただ、生気のない街だけがありのままの私を認めてくれる。
誰も知らない私を、夜の街だけは知っている。
ぶる、と寒さに体が震えた。
窓を開けたまま、ブランケットを取り出して身に纏う。
どうしても窓を閉じることだけはしたくなかった。
今だけはなにも考えなくていい。
友達も学校も先生もなにもかも捨て置いて、からっぽな自分でいることが許されている。
まっさらな、新品のシーツみたいな私。
風が髪を揺らす。
雪は音もなく降り積もる。
冷えた夜の街に白い息が舞う。
ため息をひとつ吐いて、夜の街から身を隠した。
今日も布団は冷たかった。
手足の先は、もっと冷たかった。