田舎から東京に来て、死ぬ気で働いた。文字通り死ぬ気で。高級腕時計して、外車に乗った。でも埋まらなくて結婚して息子ができた。家も買った。温かい家庭になるはずだった。
でも息子の寝返りなんて見せてももらえなかった。もう2歳になった。
お金が僕を不幸にした。息子を不幸にした。
人を見る目がないなんて、そんな言葉じゃない。彼女はもともと狂ってたのか、お金が狂わせたのか、わからない。
どうでも良いこと。
でも死にたくなくて必死で足掻いた。足掻いたつもりが逃げていた。
幸せなんてならなくていい。普通でいたい。普通に死にたい。
こんな親父だけど愛してるんだよ。君は僕の顔すら覚えてない。僕も今の君の顔は分からない。
今なら普通に死ねる気がする。
老衰して家族に囲まれて死んで行くのは普通の死に方じゃない。幸せな死に方。
人生に希望が無くなったときに死ぬのが人間の普通の死に方だと僕は思う。